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工場運営 2026.01.08

なぜ技術ある工場が「問い合わせ前」に見送られるのか。発注先の絞り込みを突破する情報開示戦略

ArchiTech株式会社 伊藤 拓也

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はじめに

日本の製造業において、技術力のある工場でも、その強みが十分に伝わっていないケースは少なくありません。
Webサイトの整備、展示会への出展、カタログの充実。情報発信や接点構築に力を入れていても、それが実を結ばず、本格的な検討の土俵に上がれないことがあります。しかも、情報収集の段階で候補から外されてしまう場合、脱落したという事実すら認識できません。

そのボトルネックはどこにあるのでしょうか。本稿では、製造業に従事する200名への調査データをもとに、この見えない絞り込みプロセスの正体と、バーチャル内覧による具体的な突破戦略を解説します。

 

数字が証明する、発注先の絞り込みの実態

当社が製造業従事者200名に実施した調査から、委託先選定プロセスの実態が明らかになりました。
発注者が新規委託先を探す際、一次候補としてリストアップする企業数は、3~4社が最も多く全体の約47%を占めます。しかし、実際に現地へ足を運び工場見学を行う社数は、全体の約51%が回答した『1〜2社』にまで絞り込まれます。

つまり、リストアップされた企業の半数以上が、工場見学という本格的な検討の場に進めていません。
Webサイトを整え、展示会で名刺交換をしても、そこで得られる情報だけでは発注者の判断材料として足りず、問い合わせ前の情報収集段階で候補から外されてしまうのです。

多くの工場が「一度来てもらえれば、自社の良さが分かる」と考えています。しかし、そもそも「来てもらう」というステージに立つこと自体が、極めて高いハードルです。そして、情報収集の段階で候補から外された場合、その事実を知る術はありません。

では、この見えない壁を突破するには何が必要でしょうか。同調査で「事前に確認できれば選定がスムーズに進む情報」を聞いたところ、特に重要視されたのが次の3点でした。

  1. 1.ラインのレイアウトと動線:42%
  2. 2.工程能力の目安とボトルネックの位置づけ:36%
  3. 3.品質管理の運用手順とトレーサビリティの実装:33%

これらは単なるカタログスペックではありません。発注者が求めているのは、生産プロセスの実態と流れ、つまり生産能力の裏付けとなる情報です。スペック表からは読み取れない「運用の実態」を、発注者は慎重に探しています。

ここに、決定的なチャンスがあります。同調査では「バーチャル内覧で工場内を公開している企業は、委託先選定にどのような影響を与えるか」という質問に対し、合計で63%の発注者が「情報を公開している企業の優先順位を上げる」と回答しています。率先して情報の透明性を高めれば、それは問い合わせ前の絞り込みを突破し、検討テーブルに残るための強力な武器となります。

 

バーチャル内覧が変える、選定プロセスの構造

バーチャル内覧は、ただ工場を紹介するために作るためのものではありません。発注者が求めている情報を、求めている形で届けるための戦略的なコンテンツです。その中核になるのが、現場の「実態」を3つの観点から伝えることです。

第一に、生産能力の裏付けです。設備リストには機械の名前が並んでいても、それが実際にどう配置され、どう連携しているかは伝わりません。バーチャル内覧では、資材搬入から出荷までの動線を空間として示すことで、カタログでは伝えきれない生産体制の全体像を可視化できます。

第二に、品質管理体制の可視化です。5Sの実施状況、検査工程の配置、トレーサビリティの実装といった、文章では伝わりにくい情報を、実際の現場の様子として見せることができます。発注者にとっては、仕様書やパンフレットよりも具体的な判断材料になります。

第三に、自社案件との適合性の事前確認です。発注者は「この工場の設備や工程で、自社が求める仕様に対応できるか」を事前に把握したいと考えています。バーチャル内覧にタグ機能で設備情報や動画を埋め込めば、発注担当者が自分で現場を辿りながら、対応可能な加工精度や処理方法を具体的に確認できます。

 

「能動的な体験」がもたらす、情報の解像度と記憶定着

バーチャル内覧の効果は、情報の「解像度」と「体験の深度」にあります。静止画やカタログを眺める受動的な情報収集に対し、自ら操作して空間を確認する能動的な体験は、圧倒的に高い情報密度を持ちます。

「見たい場所を自由に見に行ける」という体験自体が、発注担当者の記憶に強く残り、他社との比較検討時に思い出してもらいやすくなります。パンフレットやWebサイトで工場を「伝える」よりも、バーチャル内覧で「体験」してもらうことで、情報不足を理由に候補から外されるリスクを減らし、検討の土俵に残る可能性を高められます。

 

距離の壁を越え、大阪の工場が東京での商談を成功させた事例

実際に、情報開示によって物理的な距離の壁を越えた企業があります。大阪府八尾市で金属製品の製造を手掛ける藤田金属株式会社です。職人の手仕事による高品質なモノづくりを強みとする同社では、東京での直営店展開を機に、関東地方からの引き合いが急増していました。

しかし、ここで課題が浮上します。「距離」による情報の断絶です。東京での商談やオンライン会議の場では、大阪にある工場の魅力や、職人が生み出す現場の空気感を十分に伝えることができませんでした。
スマートフォンの写真や動画を見せて説明しても、断片的な情報しか伝わらず、顧客が求める「製造工程の全体像」や「信頼できる生産体制か」という問いに応えきれていなかったのです。

そこで同社は、バーチャル内覧「ミセルバ」を導入し、工場全体をデジタル化しました。

▼以下は実際の藤田金属のバーチャル内覧▼
https://youtu.be/gdwz1paKrrs?si=PEfDhqwm4nYYu0XZ

導入後は、商談の場で工場内を3Dで俯瞰して見せながら、製造の順路に沿って各工程の動画を確認できるようになりました。営業担当者がプレゼンテーションツールとして活用することで、遠隔地の顧客に対しても、現地を案内しているかのような密度の高い工場説明が可能になったのです。

この変化は、商談の質を変えました。競合他社が工場見学の機会を獲得してから初めて伝えられる情報を、自社は初回商談の時点で提示できます。口頭や写真だけでは伝えきれなかった現場の実態を、商談中にその場で見せられることが、他社との差別化につながっています。

 

情報開示がもたらす3つの経営インパクト

バーチャル内覧による情報公開は、単なる営業ツールにとどまりません。事業運営に対して、3つの観点からインパクトをもたらします。

  1. 1.   情報開示による信頼獲得

  2. 製造業において品質コンプライアンスが問われる中、工場内部を公開する行為そのものが、誠実なパートナーとしての姿勢を示すことになります。品質管理に自信があることを、言葉ではなく実態で伝えられます。

  3. 2.商圏の地理的制約からの解放

  4. 遠隔地の発注者にとって、往復数時間から一日がかりとなる工場見学はコストがかかります。技術力があっても「遠い」という理由だけで候補から外されるケースは少なくありません。バーチャル内覧があれば、距離を理由に接点を持てなかった顧客にも、現地訪問に近い情報を届けられます。

  5. 3.商談の質的転換

  6. 従来の営業では、初回訪問は会社案内で終わってしまいがちです。しかしバーチャル内覧を商談中のプレゼンツールとして活用すれば、発注者はその場で「この検査体制であれば品質基準を満たせそうだ」「小ロット対応の設備が整っているか」といった判断や確認ができます。競合他社が工場見学を獲得してから初めて伝えられる情報を、自社は初回商談の時点で提示できるため、検討の早い段階で優位に立てます。

 

セキュリティへの懸念を解消する、段階的公開設計

ここまで読んで、「機密情報の流出リスク」を心配される方もいるかもしれません。この懸念は、適切な設計で対応できます。バーチャル内覧では、撮影段階で見せる範囲と見せない範囲を定義します。機密性の高いエリアは撮影対象から除外できますし、映り込んだ情報があれば、後からモザイク処理などでマスキングも可能です。

閲覧範囲の制御も柔軟です。パスワード設定により、特定の商談先にのみ公開する運用もできます。公開版と商談用詳細版を作り分けることで、情報開示と機密保持を両立する方法もあります。

重要なのは、全てを公開することではありません。発注者が求めている「生産能力の裏付けとなる情報」を、競合よりも一歩先んじて開示することです。戦略的に公開範囲を設計すれば、機密を守りながら、検討テーブルに残るための情報を届けられます。

 

製造業特化バーチャル内覧「ミセルバ」のご案内

「ミセルバ」は、ArchiTech株式会社が提供する製造業の工場に特化したバーチャル内覧サービスです。

高精細な3Dスキャンにより、工場内を一人称視点と俯瞰視点の両方から確認できるのが特徴です。Webブラウザさえあれば、PCでもスマートフォンでも閲覧でき、商談中にその場で工場を案内することで、遠方の顧客にも現地見学に近い情報を届けられます。

また、3D空間内に情報を紐づけられる「タグ機能」も備えています。設備のスペック情報や検査工程の解説、担当者による動画説明などを、該当箇所に直接埋め込むことが可能です。発注者は気になる箇所をクリックするだけで、必要な情報にアクセスできます。

制作にあたっては、撮影から納品まで空間表現のプロフェッショナルがトータルでサポート。公開後もコンテンツの更新や改善提案を継続的に行い、営業活動に活かせる状態を維持します。

ご興味をお持ちの方には、サービス紹介資料をご用意しています。下記よりお気軽にお問い合わせください。

 

ArchiTech株式会社について

ArchiTech株式会社は「人々に愛される建築が持続的に生まれる社会を実現する」というビジョンのもと、施設のバーチャル化を通じて事業課題の解決を支援するバーチャル内覧サービス「ミセルバ」を提供しています。
2023年5月の事業開始以来、国内大手製薬会社の工場や国指定重要文化財をはじめ、約40施設のバーチャル化実績があります。

会社概要

  • 代表取締役:伊藤拓也
  • 所在地:京都府京都市左京区北白川西町87-23
  • 事業内容:バーチャル内覧サービス「ミセルバ」の運営
  • Webサイト:https://miseruba.com/

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