中国はレアメタル(希少金属)の輸出規制が相次いて強化されている状態で産業界からも調達懸念として話題となっている。ここでレアメタルに焦点をあてて「レアメタルの現状と課題」について紹介する。
レアメタルは、現代のハイテク産業に不可欠な資源であり、電気自動車、スマートフォン、再生可能エネルギー機器、半導体、医療機器などの幅広い分野で使用されている。
しかし、その希少性や産出国の偏在、供給不安定性、環境汚染問題などにより、安定供給の確保が大きな課題となっている。特に、日本のような資源輸入依存国にとって、レアメタルの安定供給は産業競争力や国家安全保障に直結する重要なテーマとなっている。
金属は、ベースメタル、レアメタル、貴金属の3種類に大別され、レアメタルは、産出量が少なく、抽出や精錬が困難な金属を指す。明確な国際的定義は存在しないが、一般的には表1の特性を持つ金属がレアメタルに分類される。
表1 レアメタルの特性
| 特性 | 特徴 |
| 希 少 性 | 地殻中の存在量が少ない、または経済的に採掘可能な鉱床が限られている |
| 偏 在 性 | 産出国が特定の地域(例:中国、コンゴ民主共和国)に集中している |
| 産業的重要性 | ハイテク製品や先端技術に不可欠な機能を果たす |
| 代替困難性 | 他の素材で代替が難しい特性を持つ |
代表的なレアメタルには、コバルト(Co)、リチウム(Li)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)などがある。
また、図2に示すようにレアメタルの一部である17元素は「レアアース」と呼ばれ、特に磁石、電池、蛍光体などに広く使用される。
レアアースはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(L)などの軽希土類とジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などの重希土類に分類され、重希土類は特に中国に産出が集中している。
レアメタルは「産業のビタミン」とも称され、少量で製品性能を劇的に向上させるため、現代産業において欠かせない存在となっている。例えば、ネオジム(Nd)は高性能磁石に、コバルト(Co)はリチウムイオン電池に、タンタル(Ta)は電子機器のコンデンサなどに使用される。
レアメタルの供給は、産出国の偏在性や地政学的要因により不安定で、以下の表2に主要なレアメタルの産出国とその特徴を示す。
表2 レアメタルの産出国の特徴
| 種 類 | 産 出 国・特 徴 |
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コバルト |
世界の約64%がコンゴ民主共和国で産出。紛争地域での採掘が多く、児童労働や環境破壊が問題視されている |
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リチウム |
オーストラリア、チリ、中国が主要産出国。電気自動車の需要急増により、需給逼迫が懸念される |
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レアアース |
中国が世界生産の約60%を占め、特に重希土類の供給をほぼ独占。2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件では、中国が日本へのレアアース輸出を事実上制限し、供給リスクが顕在化した |
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タングステン |
中国が世界生産の90%以上を占める。特殊鋼や切削工具に使用される |
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タンタル |
ンゴ民主共和国やルワンダなど、紛争地域での採掘が問題視される「紛争鉱物」の一つ |
これらのレアメタルは、産出国の政治的・経済的状況や資源ナショナリズム(自国資源の優先利用政策)の影響を受けやすく、供給の安定性が低い状況でもある。特に中国は、レアアースの精製技術でも世界の90%を占め、戦略的優位性を保持している。
米国の対中関税措置への対抗措置として中国政府はレアアース関連品目について輸出管理を開始し、輸出には中国政府への許可申請が必要となった。許可制によって実質的に輸出の遅延や停滞が発生し、価格の高騰や世界的な供給不足を招いており、レアアース入手問題が再燃している。
レアメタルの市場は小さく、需給バランスの変動により価格が乱高下しやすい特徴があり、表3はその動向である。
表3 価格動向
| 年度 | 価格動向の内容 |
| 2008年頃 | 中国やインドなどの経済発展により需要が急増し、価格が高騰。特にレアアースはピークを迎えた |
| 2008年 以降 |
世界金融危機による景気後退で価格が下落 |
| 2010年 代以降 |
電気自動車や再生可能エネルギー技術の普及に伴い、コバルトやリチウムの需要が再び増加。長期的な価格上昇が予想される |
| 2020年代 | 電気自動車の普及やAI・IoT機器の需要増により、コバルトやリチウムの需給ギャップが拡大。コバルトの将来見通しでは、需要が供給を上回るリスクが指摘されている |
価格高騰は、電気自動車の生産コスト上昇に直結し、車体価格の約3分の1を占めるバッテリー価格に影響を与える。
レアメタルの需要は、表4のような技術的・社会的要因により急増している。
表4 需要の拡大
| 分 野 | 内 容 |
| 電気自動車 | リチウムイオン電池やモーターにコバルト、リチウム、ネオジム、ジスプロシウムが使用される。電気自動車普及に伴い、2020年代以降の需要が急増している |
| 再生可能エネルギー | 太陽光パネルにインジウム、風力発電にレアアースが使用される |
| IT機器 | スマートフォンやパソコンの半導体にガリウムやタンタルが不可欠である。日本では人口の90%以上がスマートフォンを使用し、半導体需要が増加している |
| 先端技術 | AI搭載機器、IoT、5G通信網、医療機器などにレアメタルが広く使用される |
これらの需要増は、新興国の経済成長(BRICs諸国)や人口増加によりさらに加速し、資源獲得競争が激化している。
レアメタルには、供給リスク、価格変動、環境負荷、リサイクル技術の確立などの多くの課題を有している。では具体的に説明しよう。
レアメタルの安定供給と利用には、表5のような課題が存在する。
表5 供給リスク
| 項 目 | 内 容 |
| 産出国の偏在 | 特定の国(特に中国やコンゴ民主共和国)に生産が集中しており、政情不安や輸出制限が供給障害を引き起こす可能性がある。例えば、2010年の中国によるレアアース輸出制限は、日本産業に大きな影響を与えた |
| 資源ナショナリズム | 中国やインドネシアなど資源国が自国優先の政策を強化している。インドネシアは2014年に鉱石輸出禁止措置を、中国は2020年以降レアメタルの輸出規制を実施するなどの例がある |
| 紛争鉱物 | コバルトやタンタルは、コンゴ民主共和国などの紛争地域で採掘されることが多く、児童労働や強制労働、環境破壊が問題となっている。武装勢力が鉱物収益で資金を得るため、紛争の長期化や悪化が懸念される |
レアメタルの供給リスクは表6に示すように最近では2023年以降に中国が相次いで輸出規制を強化したことにある。
表6 レアメタルの略史
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年 度 |
内 容 |
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1962 |
年 |
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第17回国連総会で、「天然の富と資源に対する恒久主権」が決議された |
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1980 |
年後半 |
中国、内モンゴル自治区バイユン・オボ鉄鉱山から稀土が副産物として生産を開始 |
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1983 |
年 |
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日本、レアアースの備蓄に着手 |
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1985 |
年 |
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中国、輸出税還付開始 |
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1991 |
年 |
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中国、国務院が「タングステン (W)、錫 (Sn)、アンチモン (Sb)、イオン型稀土鉱物を国家保護性採掘鉱種に指定することに関する通達」を発表 |
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1992 |
年 |
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中国、鄧小平が「中東有石油、中国有稀土、一定把我国稀土的優勢発揮」 (中東には石油があるが、中国には稀土類がある。中国は稀土類で優勢を発揮できるだろう)というスローガンを公表 |
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1998 |
年 |
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中国、輸出割当許可証制度開始、鉱石を「加工貿易禁止類商品目録」対象に |
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2000 |
年 |
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中国、輸出枠割当制度を開始 |
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2002 |
年 |
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中国、外国企業の鉱山開発禁止、独資での精錬・分離事業不許可に |
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2004 |
年 |
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中国が冶金鉱業発展のために、希土類元素、タングステン、錫、アンチモンの資源確保強化を打ち出し、輸出奨励から抑制に税制を転換、数量制限の強化、輸出許可対象品目の拡大、海外からの中国国内での委託製錬禁止などを実施 |
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2005 |
年 |
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中国、輸出税還付廃止 |
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2006 |
年 |
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中国、採掘・生産・輸出の統制管理開始 |
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2007 |
年 |
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中国、生産計画を「指導的」から「指令的」へ強化、新規採掘許可証発行一時停止 |
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日本、文部科学省、「元素戦略プロジェクト」に着手 |
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2009 |
年 |
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中国、「レアアース産業発展計画(2009-2015)」を策定、年間輸出量35,000トンに規制 |
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中国はレアアースの 97%を供給 |
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2010 |
年 |
6月 |
EUにとって不可欠な原材料レポートを公表した |
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9月 |
中国がレアアースを対日輸出規制に踏み切る |
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10月 |
日本政府が「レアアース総合対策」を発表 |
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双日商事は、日本政府機構である JOGMECと共同で 2.5億ドルを豪州のレアアースメーカー・ライナスに出資 |
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2012 |
年 |
3月 |
日本、米国、欧州連合 (EU)と一緒に、中国のレアアース輸出規制についてWTOに提訴 |
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4月 |
日立がレアアースを使用しない産業用モーターを開発 |
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12月 |
先端素材産業発展5か年計画を公表 |
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2014 |
年 |
1月 |
インドネシア、未加工鉱石(ニッケル、ボーキサイト、銅、鉄鉱石など)の輸出を原則禁止する措置を実施 |
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8月 |
中国の規制はWTO協定違反という判決を引き出す |
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レアアースの価格が急落し、中国のレアアース界は赤字となる |
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2015 |
年 |
1月 |
中国政府はレアアース輸出規制を全面撤廃 |
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中国のレアアースの依存度は 55%まで低下 |
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2016 |
年 |
2月 |
東北大学がレアメタルやレアアースを一切使わない高性能排ガス触媒、「ナノポーラスNiCuMnO金属複合化合物」を開発 |
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2017 |
年 |
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インドネシア、一部鉱種・条件付きで禁輸が緩和 |
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10月 |
デンソーを主体とする東北大学、筑波大学の産学連携グループは、鉄とニッケルが原子レベルで規則配列したFeNi超格子磁石材料の高純度合成に世界で初めて成功し、高い磁石性能を期待されており、今回の成果は高性能レアアースフリー磁石の実用化を大きく前進させるもの |
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2018 |
年 |
2月 |
トヨタ自動車はレアアースの使用量を半減した磁石の開発に成功 |
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2021 |
年 |
1月 |
中国、レアアース管理条例を公表 |
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2月 |
米国、重要鉱物や半導体などの戦略物資を巡る供給網の強靭化を政府一体となって進める大統領令に署名 |
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8月 |
経済安全保障の観点から財務省は改正外為法による外国人投資の重点審査対象にレアアースなど重要な鉱物資源に関わる業種を追加すると発表 |
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9月 |
中国産マグネシウムやシリコンなどのレアメタルが急騰している |
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日産と早稲田大学は電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発 |
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泰和電気工業はレアメタル集荷量増加に伴い群馬工場の倉庫を2倍にして対応し、ニッケル、コバルトなどのレアメタルの集荷量増に対応する |
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10月 |
中国政府は2021年のレアアースの生産枠を16.8万トンに設定したと公表した |
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秩父回収資源は廃棄電子機器から金・銀・パラジウムなどの貴金属を回収する事業を開始。3.5億円を投じて電子機器を1時間に約1トン処理できる破砕・選別ラインを導入 |
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阪神機器は電極触媒に高コストな白金を用いない純水素型燃料電池による発電システムの開発に着手 |
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ダイキン工業は2025年度までに、全ての空調機器でレアアースの使用量をほぼゼロにする方針を公表 |
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三菱マテリアルは直島精錬所と小名浜精錬所で電子基板から金、銀、銅、パラジウムなどを回収して販売しており、現在、年14万トン処理量を2022年に16万トン、2030年に20万トンに引き上げる予定 |
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JX金属は佐賀関精錬所に熱処理炉を2022年1月に新設し、電子基板からレアメタルを回収してリサイクルして活用する |
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日本冶金工業は廃棄物から回収したニッケルを使うのを400トン/月へと倍増する方針 |
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中国、レアアース3社を経営統合して戦略的な再編を計画し、統制を強める意向 |
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物質・材料研究機構は磁石メーカーなどと共同で、高特性磁石を研究開発する産学連携プラットフォーム(磁石MOP)を2022年に発足させる |
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11月 |
トヨタ自動車はドナウ大学(オーストリア)と共同で、シミュレーション技術と人口知能(AI)を組合せた磁石材料探索システムを開発 |
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デンソーは、鉄とニッケルのみで構成しレアアース(希土類)が不要な磁石を5~10年内に実用化する方針を示し、小型モーターでの採用を目指し、将来は電動車用モーター向けの実用化を視野に入れる |
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ダイキン工業は高温領域での磁力を約1.6倍に高めた高効率モーター用ネオジム磁石を開発 |
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住友金属鉱山は車載電池から銅、ニッケル、コバルト、リチウムを低コストで取り出す世界初の抽出技術を確立した |
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12月 |
白山は、レアメタルを使用しない熱電発電モジュールを開発 |
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2022 |
年 |
1月 |
量子化学技術研究開発機構/マイクロ波化学はレアメタル精製について化学処理とマイクロ波加熱を組合せた新たな技術の社会実装に取組み2028年頃に実用化を目指すと発表 |
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2月 |
米国、レアアースなど重要鉱物の国内生産を後押しするための投資計画を発表 |
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3月 |
東芝/東北大学は、少ないレアアース量でネオジム磁石と同等の磁力を持つ「サマリウム鉄系等方性ボンド磁石」を開発した。副産物(余剰資源)であるサマリウムの有効活用により資源リスクを回避することができる |
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2023 |
年 |
5月 |
廃磁石から重レアアースを高効率に分離・精製する技術開発に経済産業省が支援する |
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8月 |
中国、ガリウム・ゲルマニウムの輸出規制開始 |
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12月 |
中国、黒鉛(グラファイト)の輸出規制開始 |
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中国、レアアース磁石等の製造技術の輸出禁止・制限技術リスト改正・即日施行 |
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2024 |
年 |
9月 |
中国、アンチモンの輸出規制開始 |
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10月 |
中国、レアアース管理条約を施行(10月1日)。全レアメタルに適用・採掘総量規制・トレーサビリティ強化 |
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2025 |
年 |
2月 |
中国、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウムの5元素を輸出規制対象に追加 |
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4月 |
中国、サマリウム等7種の中・重希土類レアアース関連品目の輸出管理開始(許可制) |
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レアメタルの市場は小さく、需給バランスの変動により価格が不安定で、電気自動車や半導体の需要急増により、将来的な価格高騰が予想され、産業コストに影響を与える。
レアメタルを採掘すると森林を破壊し環境破壊のみならず環境汚染が生じる。精錬過程では有害物質の排出による水質汚染などが発生し、表7に示すように環境負荷が発生し易い。
表7 環境負荷
| 項 目 | 内 容 |
| レアメタルの採掘・精錬 | 環境破壊や汚染を引き起こし、森林破壊:鉱山開発による生態系破壊 |
| 水質汚染 | 精錬過程での有害化学物質の排出 |
| 二酸化炭素排出 | エネルギー集約型の精錬プロセスによる温室効果ガス排出 |
これらは、持続可能な開発目標(SDGs)への対応を難しくしている。
レアメタルのリサイクルは、技術的・経済的課題が多く、表8のような問題がある。
表8 リサイクル技術の課題
| 項 目 | 内 容 |
| 回収効率の低さ | 使用済み製品(例:スマートフォン、家電)からのレアメタル回収は、技術的に難しくコストが高い |
| リサイクル対象の選定 | 経済産業省はタングステン(W)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、ネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Gy)をリサイクル優先鉱種に指定しているが、全てのレアメタルでリサイクル技術が確立しているわけではない |
| 経済合理性 | リサイクルコストが新品の鉱石採掘よりも高くなる場合、経済性が課題となる |
日本はレアメタルのほぼ全量を輸入に依存しており、供給途絶リスクが高い。特にレアアースの60%を中国から輸入しているため、地政学的リスクが顕著である。
また、ハイテク産業や環境技術におけるレアメタル依存度が高く、供給不安は産業全体に影響を及ぼす。
日本をはじめとする各国は、レアメタルの安定供給を確保するため、以下のような施策を推進している。
レアメタルは字のごとく希少な金属である。そのためリサイクルは重要であり、地中に埋まったレアメタルを採掘し、電子機器などに利用された後に寿命となり、地上に多くのレアメタルが存在することになる。そのまま廃棄や放置したままにしないで、その活用が重要となってきた。つまりリサイクル技術を確立することは急務の課題となっている。
表9 都市鉱山と小型家電リサイクル法
| 項 目 | 内 容 |
| 都市鉱山 | 使用済み家電や電子機器に含まれるレアメタルを「都市鉱山」として回収する取り組みが注目されている。携帯電話やパソコンには金、銀、レアメタルが含まれており、これらをリサイクルすることで輸入依存の軽減に寄与する |
| 小型家電リサイクル法 | 2013年に施行されたこの法律は、小型家電からのレアメタル回収を促進するために策定された。環境省と経済産業省は、モデル事業を通じてリサイクルシステムの構築を進めている |
| 先進的リサイクル技術 | DOWAホールディングスは、秋田県の製錬所でTSL炉を活用し、20種類の金属(金、銀、セレン、アンチモンなど)を回収する技術を確立。経済合理性の向上が今後の課題となっている |
レアメタルの入手難を克服するためにレアメタルの回収技術の向上、代替材料の開発が必須であり、現在の技術では代替材料がない場合にはなるだけ少量の使用で機能を発揮させる省資源化技術の確立も重要であり、表10のような事例がある。
表10 代替材料と省資源化
| 項 目 | 内 容 |
| 代替技術の開発 | レアメタルの使用量を減らすため、ナノテクノロジーや新素材の開発が進められている。例えば、鳥取大学と戸田工業はレアメタル不要のナトリウムイオン電池の開発に成功している |
| 省資源化 | 少ないレアメタルで同等の性能を発揮する技術開発が急がれており、経済産業省は民間企業への研究助成を通じて、省資源化を推進している |
レアメタルの供給が困難なことを想定して予め備蓄することが検討されている。
4-3-1 国家備蓄
日本は1983年からレアメタル備蓄制度を運用し、ニッケル、クロム、タングステン、コバルトなど7鉱種を対象に、60日分(国家42日分、民間18日分)の備蓄を目指しており、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が管理し、短期的な供給障害に備えている。
レアメタルの国家備蓄を茨城県にある国家備蓄倉庫で一元管理しており、この倉庫は約37,000平方メートル(野球場約3面分)の面積を持ち、備蓄物資の効率的かつ安全性の高い管理を行っている。
4-3-2 民間備蓄
電気自動車やリチウムイオン電池、半導体などの需要増加に伴い、レアメタルの必要量が増加している。特にコバルトやリチウムは、コンゴ民主共和国や中国に産出が偏在しており、供給リスクが高いため、民間備蓄の重要性が増しており、企業による自主的な備蓄も推進され、供給リスクの軽減に寄与している。
レアメタルは市場規模が小さく、価格変動が大きいため、民間企業にとって備蓄コストが課題となっている。2008年頃のレアメタルの価格高騰や2010年の中国によるレアアース輸出制限のような事例を受け、企業は備蓄戦略を慎重に検討している。
レアメタルの入手難に対してレアメタルの供給源の多角化として表11のような取り組みがある。
表11 レアメタルの供給源の多角化
| 項 目 | 内 容 |
| 海外鉱山の権益確保 | 日本企業は、オーストラリア、ザンビア、コンゴ民主共和国などでの鉱山権益取得を進めている。2024年度の経済対策では、1,600億円の予算を投じ、特定国依存の低減を目指している |
| 南鳥島のレアメタル | 日本のEEZ内、南鳥島沖にはコバルトやレアアースを含むマンガン団塊が豊富に存在しているのが確認されている。2026年からの商業化を目指し、6,000m深海からの採掘技術開発が進められている |
IT資産を適正処分することをアイタッド(ITAD=IT Asset Disposition)と呼び、IT資産のリユース(再利用)・リサイクル(再資源化)することによって紛争鉱物の需要を減らすことができるとともに循環型経済の取組みでもある。
表12 IT資産の適正処分
| 項 目 | 内 容 |
| ITADサービス | IT機器のリユースやリサイクルを推進するITADは、データ消去や環境負荷低減を確保しながらレアメタルを回収している。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献している |
| 紛争鉱物対策 | ITADを通じて、紛争鉱物の需要を減らし、倫理的な資源利用を促進する取り組みが広がっている |
レアメタルの安定供給に向けた取り組みは、技術革新と国際協力を通じて進化しており、今後を展望すると表13のようになる。
表13 今後の展望
| 項 目 | 内 容 |
| 技術革新 | リサイクル技術や代替材料の開発が進むことで、輸入依存度が低下する可能性がある。特に、ナノテクノロジーやAIを活用した新素材開発が期待される |
| 国際協力 | 欧米や新興国との資源確保競争が激化する中、国際的なサプライチェーン構築が重要である。オーストラリアやカナダとの共同開発プロジェクトが拡大する見込み |
| 持続可能性 | 環境負荷の低減と紛争鉱物問題の解決に向け、サーキュラーエコノミーの推進が不可欠。企業や消費者の意識向上も重要である |
| 地政学的リスクへの対応 | 中国依存の低減や南鳥島の資源活用により、日本の資源セキュリティが強化される。2026年以降の南鳥島プロジェクトの進展が期待されている |
レアメタルは、現代のハイテク産業を支える不可欠な資源であるが、供給の不安定性、価格変動(特に価格高騰)、環境負荷、倫理的問題など多くの課題を抱えている。
日本は、リサイクル、代替材料、備蓄、供給源多角化などの戦略を通じて、これらの課題に対応している。特に、都市鉱山の活用や南鳥島の資源開発は輸入依存の低減と資源セキュリティの強化に寄与することになり、大いに期待されている点である。
今後は、技術革新と国際協力を通じて、持続可能かつ倫理的なレアメタル供給システムの構築が求められる。レアメタルの安定供給は、日本の産業競争力と持続可能な未来を支える鍵となると思われる。
1. 青木正光,"レアメタル/レアアースの最前線" エレクトロニクス実装技術
Vol.38 No.5 pp18~pp25 (2022)