2024年12月14日(土) 千代田区丸の内の Tokyo Innovation Base にて、日本最大級のオリジナルハードウェアコンテスト「GUGEN 2024」が開催された。
2024年は60点を超える製品がエントリーした。それらの多くは、スタートアップや学生が中心となり開発された、テクノロジーを駆使して既存の枠組みを乗り越えるアイディアに溢れた製品だ。
今回は多数のエントリーの中から、基板の窓口が特に注目した15製品をピックアップし、出品者にインタビューを行った。
今回展のインタビュー動画では、従来の製品紹介に加えて、開発の意図やポイント、さらには今後の展開にまで踏み込んだ質問を行い、新たな技術が生まれる過程に迫った。
本記事では後編として、全取材動画のうち半分を紹介する。
GUGEN公式サイト:https://gugen.jp/
GUGEN概要
GUGENは株式会社ピーバンドットコムが主催する、日本最大級のオリジナルハードウェアコンテストだ。2013年に開始し、前身となる「電子工作コンテスト」から数えると今回で16回目の開催となる。
出品内容はアート・音楽、アクセサリ、ビジネス、ホビー・エンタメ、教育・学習などあらゆる範囲に及び、テクノロジーを駆使した問題解決や新たなエンターテイメントの可能性に出会える場となっている。
また出品者である学生やスタートアップ間のコミュニケーション促進も積極的に行っており、交流から生まれる新たなクリエイションに寄与している。
ペットの毛を手芸材料にリサイクル「アニモール」 (優秀賞受賞)
https://youtu.be/D8KDD-fDNdA
「アニモール」は、ペットの抜け毛をアップサイクルし、形として手元に残せる素材に成形する製品である。日常的に捨てられてしまうペットの毛に着目し、それらを紐状に加工したのち、針金を巻き込むことでモールを作成する。針金を芯材とするモールは、ボールやアクセサリーなどに簡単に加工でき、デザインの自由度が高い点が特徴である。
毛の色や模様を活かすことで、オリジナルの色合いやパターンを楽しむこともできる。また、接着剤や染料などを使わずに、ソファや床に落ちている抜け毛をそのまま再利用できるため、廃棄物を減らすという観点でも価値があるプロジェクトといえる。
音環境でもささやき声まで集音!ノイズキャンセリングマイク「WhisperMask」(Goodアイデア賞・aiwa賞受賞)
https://youtu.be/i5U1UNY5oF0
「WhisperMask」は、騒がしい環境でも使用者の声だけを正確に拾える柔軟性の高いマイクである。このマイクは一般的なピンマイクを拡張し、柔らかい素材で覆うことで、発話者の声を直接的に認識する設計となっている。マスクやヘッドセットの形状に応用することで、例えば外出先でのオンラインミーティングや工場のような騒音下での会話を可能にするデバイスである。
マイクのピックアップ部分を大型化することで、大きい音のみに反応するノイズキャンセリング機能を実現している。そのため、大声を張り上げる必要がなく、小さな声やささやき声でも拾うことが可能だ。これにより、地下鉄や重機が稼働する現場などの騒音環境下でも、快適なコミュニケーションが実現する。また、幅広い周波数帯に対応しており、通常の会話だけでなく、低音域の声も問題なく拾うことができる。
細部にも対応!指先からハンダ線を自動送り!「ハンダーおくりん」(ヴイストン賞・トラ技&トラ技ジュニア 賞受賞)
https://youtu.be/EwScZBkAwfk
「ハンダーおくりん」は、指先やピンセットから簡単にハンダを供給できる装置である。この装置の特徴は、従来のハンダ供給システムとは異なり、手元から直接ハンダを出すことができる点にある。既存の機器では、金額が高く、特に小型基板ではコテ先が適応しにくい問題があったが、この装置では左手に装着するだけで、使用者が持つコテ先をそのまま使用することができ、狭い場所でもハンダ作業が可能となる。
製造にあたっては、3Dプリンターを活用してコストの削減を図りつつ、小ロット生産を行う予定である。一般的なハンダ送り機器と比較して、小型基板でも効率的に使用できるため、作業の精度とスピードの向上が期待される。
LiDARも装備!拡張性と走破性に優れた汎用AMR「動く板NEO」
https://youtu.be/t70KfxkcAMs
「動くいたProject」は、自動運転が可能なモビリティの開発を行う取り組みである。最新バージョン「動く板NEO」は、アタッチメントを装着することで用途を柔軟に変えられ、荷物運搬用のカーゴやディスプレイを搭載してのサイネージ運用など、多様なシーンで活用可能な設計となっている。
「動く板NEO」はサスペンションを搭載しており、不整地や段差の多い路面でも安定して走行できる性能を持つ。また、重量200kgを積載した状態でも1時間以上、無負荷時には5~6時間の運用が可能である。また、搭載されたコンピューター「Jetson Orin Nano」により、画像認識やセンサー追加によるデータ処理も実現されている。
さらに、深度カメラ「RealSense」による距離検知やLTE回線を用いた遠隔操作が可能で、IoTアプリケーションとの連携が期待されている。電動アシスト自転車のように交換可能なバッテリーモジュールを採用することで、効率的な運用が可能となるなど、拡張性と走破性の両面で優れた技術が搭載されたAMR(Autonomous Mobile Robot)である。
こだわり抜いたリレースイッチの音が時を刻む「LEDデジタル時計」
https://youtu.be/ZDdrC2Z6IJQ
電子基板作家だいのすけ氏は4つのメカニカルリレーが音を奏でるLEDデジタル時計の展示を行った。この作品は「電子部品が織りなす美しさ」をテーマに制作されたアート作品で、1秒ごとに基盤上のリレーが動作し、機械式時計のような「カチカチ」という音を生み出すユニークなデザインが特徴である。
本作品は、74シリーズおよび54シリーズのロジックICで構成されている。表示される数字の字体調整のためにLEDドライバーにオープンドレインのICを外付けするなど、細部までこだわり抜かれた設計となっている。また、リレーは2つ1組で交互に動作する仕組みを採用、これにより寿命を延ばしつつ音の深みを演出している。
2つのリレーは厳密には同時ではなくわずかな時差を持って動作するため、「カチカチン・カチカチン」といった独特の音が生まれる。デジタルとアナログの技術を絶妙に融合させたユニークな作品である。
家にいながらワカサギ釣りが楽しめる「SyncFish」
https://youtu.be/LYHPN1QRv6A
「SyncFish」は、スマートフォンを上下に動かす直感的な操作でワカサギ釣りが楽しめる電動リールである。Wi-Fiとジャイロセンサーを活用し、スマホからリモートで釣り動作を制御可能だ。若年層をターゲットにし、釣りに興味を持たない子どもたちが自宅から参加できるリモート体験を提案している。
また、リールには独自開発のロータリーエンコーダーが搭載されており、指定の深さまで仕掛けを落とすことができるなど、エキスパートの釣り愛好者にとっても魅力的な機能を備えている。
直感的な操作性を重視し、複雑な操作が必要な一般的なリールとは異なり、簡単な動作で釣りを楽しめる設計になっており、親子での気軽な釣り体験をサポートする。今後はインターネット回線を活用した機能の拡張も視野に入れている。
AIで口腔内の健康をリアルタイム判定「歯科医師を再現したAI歯科システム」
https://youtu.be/JN_1OOw8kxc
「歯科医師を再現したAI歯科システム」は、大学病院の臨床データを元にした口腔の健康状態評価を行うシステムである。同システムでは、特殊なカメラを使用して歯と歯茎を撮影し、得られた写真をもとにAIが状態を点数化する。その後、年齢や性別、生活習慣などの個別情報を総合的に分析し、ユーザーに最適なアドバイスを提供する仕組みとなっている。
特徴の一つは、特殊なフィルターを用いて、プラークや歯茎の状態などの特定の健康指標を強調した写真を撮影することにある。さらに、AIはこの情報をもとに過去の電子カルテデータと照らし合わせ、最も近い健康状態を評価する。
現在、実験段階ではあるが、既に一定の実用性を備えており、今後の発展が期待されるシステムである。