製造業の現場では今、人手不足や業務の属人化、技術継承の遅れなど、さまざまな課題が深刻化しています。中でもとくに問題となっているのが「指導する人材の不足」です。
2025年度版ものづくり白書(46、47ページ)によれば、製造業において「能力開発や人材育成に問題がある」とした事業所の割合は85.3%にのぼります。その内訳を見ると、「指導する人材が不足している」が65.9%と最も高く、次いで「人材育成を行う時間がない」が46.0%となっており、教える側のリソース不足が浮き彫りになっています。
こうした根深い課題に対し、弊社、株式会社コミュニケーションビジネスアヴェニュー(CBA)は専門的な対応を現場へと移管しつつ、現場とオフィスを含めた会社全体で問題解決を図っていく「シフトワークレフト」という新しいアプローチを提案しています。
シフトワークレフトとは、トラブルが発生してから解決に至るまでのプロセスを、できるだけ早い段階(プロセス図の左側=レフト)へ「前倒し(シフト)」して解決していこう、という考え方です。
トラブルは、解決が遅れれば遅れるほどコストも時間も膨らんでいきます。たとえば、「ベテラン技術者を現場に派遣して対応するケース」と、「現場の作業員自身がその場で解決するケース」とでは、同じ「解決」でもその中身は全く異なります。
後者の現場で解決するほうが、時間もコストも最小限にすることができます。だからこそ、できるだけ「左側」で解決することを目指すのがシフトワークレフトのアプローチです。
作業員自身で解決できる仕組みを構築することが、従業員満足度に加え顧客満足度の向上へと繋がっていくのです。シフトワークレフトとは、指導者側の人材が不足している一方で、利益向上をしていかなければならない製造業にまさに必要とされているアプローチと言えるでしょう。
シフトワークレフトというアプローチを実現するのが、AIやARといった最新技術です。では、製造業の指導者不足という課題において、AIやARがどのように役立つのでしょうか。実際に製造業の現場で使い勝手が良いと評価されている「AIチャットボット」と「AR遠隔サポート」について知っておきましょう。
現場の問題解決に役立つのは、インターネット上の幅広い情報を調査して回答するAIではなく、社内に蓄積されているデータを調査して回答してくれるAIチャットボットです。AIを活用することで、日々増えていく社内ナレッジを短い時間で見つけることができます。英語や中国語といった外国語のマニュアルや複雑な法令・規則(ガイドライン)を日本語で分かりやすく解説し、要約してくれます。
AR遠隔サポートとは、離れた拠点にいるベテラン技術者が現場にいる作業員に迅速かつ正確なサポートを提供できる技術です。
現場にいる作業員は、ARを使ったビデオ通話を通じて、まるでベテラン技術者が隣にいるかのように指示を受けられます。結果、技術者が現場へわざわざ出向く時間や、コストのかかる遠方への出張を回避することができます。さらに、一刻を争う故障や障害をスムーズに解決していけます。
では、具体的にAIとARを使った「シフトワークレフト」をどのように実現していくのか見ていきましょう。
私たちが提供するAIソリューション「GIDR.ai(ガイダーエーアイ)」とARソリューション「CareAR(ケアエーアール)」を組み合わせた、3つのステップ+αをご紹介します。
※上記の画像はデモ動画からのスクリーンショットとなります。動画はこちら(https://youtu.be/R5ICN0OMxnQ?si=TY8PbL2xsxVSevHz)からご覧いただけます。
「こんな初歩的なことを聞いたら、イラっとされないかな…」「自分で調べろ、と言われたら嫌だな」。現場の作業員は上長に相談する前に、こんなことを心配するかもしれません。
そこで登場するのが、AIソリューション「GIDR.ai」です。
現場で問題が発生した際、まずはその場にいる作業員がAIチャットボットに質問をすることができます。AIは、社内のマニュアルや過去の対応履歴といった、あらかじめアップロードされた資料の中から答えを探して提示してくれます。インターネット上の不確かな情報や、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を答える心配はありません。
まずはAIに気兼ねなく聞いてみる。これが、シフトワークレフトのステップ1です。
※上記の画像はデモ動画からのスクリーンショットとなります。動画はこちら(https://youtu.be/4dR_5wSDEWM?si=TLgSdWn42I7fk-mn)からご覧いただけます。
AIの説明だけでは分かりにくい複雑な手順もあります。そんなときはARマニュアルを参照しましょう。
ARソリューション「CareAR」を使えば、3Dデータや映像を埋め込んだ、インタラクティブなデジタルマニュアルをあらかじめ作成しておけます。
たとえば、iPadを実際の機器にかざすだけで、その横に3Dモデルの“双子”(デジタルツイン)が出現します。画面に映し出される作業手順に沿って、目の前の機器と3Dモデルを見比べながら直感的に作業を進めることが可能です。経験の浅い作業員でも、安定した品質で業務を遂行できます。
※上記の画像はデモ動画からのスクリーンショットとなります。動画はこちら(https://youtu.be/An7S35CHnu4?si=HRhMYNXe7YT58r1-)からご覧いただけます。
ARマニュアルを見ても自己解決が難しい場合は、いよいよベテラン技術者の出番です。「CareAR」のAR遠隔サポート機能は、単なるWeb会議ツールではありません。
タブレットやスマートフォンを使って現場から送られてくる映像に、遠隔地の技術者が矢印や丸といったAR注釈(アノテーション)を直接書き込み、分かりやすい指示を送ることができます。
一般的なビデオ通話だと、「そこじゃない、もっと下!」「もう少し左!」といったコミュニケーションの齟齬が発生しがちです。しかしAR遠隔サポートを使えば、AR注釈を使って的確な指示出しをすることが可能となります。
このAR注釈は、カメラが動いても対象物に追従していきます。そのため、いったんiPadなどの端末を脇に置いて作業をして、再び対象物を映してもずれてしまうことはありません。
AR遠隔サポート機能により、貴重なスキルを持つ技術者は、わざわざ現場へ行かなくてもオフィスなどの拠点から複数の案件を効率的にサポートできるようになります。
これまで見てきた3つのステップに追加されるのが「+α」のステップ、サポート内容をナレッジ化するということです。弊社のソリューションは、トラブルを解決して終わりではないのです。むしろ、ここからが重要となります。
実は、ステップ3の遠隔サポートの内容はすべて録画されており、このデータを再びAIプラットフォーム「GIDR.ai」に読み込ませて学習させることができます。
AIは録画データから自動で文字起こしを行い、対話内容を要約・分析。「なぜ作業員が自己解決できなかったのか」「マニュアルのどこが分かりにくかったのか」といった原因を特定し、その分析結果を基にAI自らがFAQやマニュアルを改善してくれます。
一度発生した遠隔サポート対応を、会社全体の「知恵」、つまりナレッジとして蓄積していくことができるのです。このサポートとナレッジの蓄積というサイクルを高速で回し続けると、次に同じ問題が発生した際には、改善されたナレッジによって作業員は自己解決できるようになっていきます。今まで以上に問題解決の時間は早くなっていくのです。これこそが、シフトワークレフトの真髄です。
▶AIソリューション「GIDR.ai」についての詳しい資料はこちら(https://gidr-ai.cba-japan.com/docdl/)からご覧いただけます。
▶ARソリューション「CareAR」についての詳しい資料はこちら(https://carear.cba-japan.com/docdl/)からご覧いただけます。
「遠隔サポートならZoomやTeamsといったWeb会議ツールでも良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、フィールドワーク専用に設計された「CareAR」は、現場での使い勝手が大きく異なります。
たとえば、セッション開始と同時にiPadなどの端末の背面カメラがすぐに起動し、現場の状況を映し出せるため、カメラ設定を切り替える手間がありません。また、最初に自分の顔が大きく表示されることもなく、相手の映像がすぐに表示されます。
これらは一見すると小さな違いですが、直感的に操作できるシステム設計というのはスピードが求められる現場作業において極めて重要な要素となります。
この「シフトワークレフト」は、単なる作業効率化に留まらず、「利益向上」と「売上拡大」の両面から企業の成長に貢献していきます。どのようにでしょうか。
現場派遣コストの削減: 遠隔サポートや自己解決により、技術者の交通費・宿泊費・人件費を大幅に削減します。全国・海外に現場が点在する製造業では、1件あたり数万~数十万円のコスト削減に繋がるケースも少なくありません。
ダウンタイム(停止時間)の短縮: 設備の停止時間を最小限に抑え、生産機会の損失や納期遅延によるペナルティを防ぎます。
熟練者依存からの脱却: 一人のベテラン技術者が特定案件に拘束されることなく、遠隔から複数現場を同時にサポートできるため、人的リソースの稼働率が最大化されます。
顧客満足度の向上: 迅速なトラブル解決や納期遵守は、取引先からの信頼を高め、継続受注や大型契約に繋がります。
自社製品のアフターサービスを差別化:自社製品の購入顧客に対し、AIとARによる迅速なトラブル解決サービスを提供することで付加価値を創出し、保守契約のアップセルを促進できます。
新規市場への対応力強化: 地理的な制約なく高品質なサポートを提供できるため、海外や遠隔地への販路拡大を後押しします。
弊社のAI・ARソリューションは、すでに多くの現場で成果を上げています。いくつかの事例を紹介します。
ANAエンジンテクニクス様: 海外メーカーとの連携や広大な空港内でのメンテナンスに「CareAR」を活用。円滑なコミュニケーションと時間短縮を実現したと高い評価をいただいています。
大手住宅機器インフラメーカー様: 電話で平均25分かかっていたトラブル解決が、「CareAR」導入後は平均12分へと約52%短縮されました。
ゼロックス社様: これまで技術者を派遣していた案件のうち、年間71,400件を遠隔サポートで解決。これは、7万件以上の「行かなくてもよかった出張」がなくなったことを意味しています。
AI・ARソリューションを提供する弊社は、19年間にわたりソフトウェアの受託開発と海外製品のローカライズ事業を展開してきました。これまでカスタマーサポート部門向けの事業を中心に展開してまいりましたが、近年は航空機エンジンメンテナンス業界(ANAエンジンテクニクス様など)や大手住宅機器インフラメーカーへと対象領域を広げ、各業界の特性に合わせた専門的なサービス提供に積極的に取り組んでいます。
本記事では、製造業が直面する指導者不足という深刻な課題に対し、AIとARを活用した「シフトワークレフト」という解決策をご紹介しました。
トラブル解決のプロセスを「前倒し」する「3つのステップ+α」は、単にコストを削減していくだけではありません。若手や経験の浅い作業員が、AIやARのサポートを得ながら自らの力で問題を解決していく経験を積んでいけます。それは彼らの自信とスキルの向上へと繋がっていきます。さらに、ベテラン技術者は、移動時間から解放され、より専門性が求められる業務や複数現場のサポートに集中できるようになります。
これは、従業員一人ひとりの働きがいを高め、組織全体の技術力を底上げする、持続可能な人材育成の仕組みです。テクノロジーは、人の仕事を奪うのではなく、人がより創造的な仕事に取り組むための強力なパートナーとなり得るということです。
貴社の現場が抱える課題解決の第一歩として、AIとARを活用した新しい働き方を検討してみてはいかがでしょうか。