今日の製造業において、デジタル化の波は急速に押し寄せている。一方で、長年にわたり培われてきたレガシーな運用やシステムが、新たな成長の足枷となる場面も少なくなく、商品情報の管理と流通においては、非効率なプロセスが事業全体の生産性向上を妨げる大きな課題となっている。
このような状況の中、monolyst株式会社(以下、当社)は、AIの力を活用したAIセールスプラットフォーム「monolyst(モノリスト)」を開発・提供している。本稿では、製造業が直面する情報流通の課題と、それらを解決し、必要な人に良いモノが届く世界を実現することを目指す「monolyst」について、その開発背景、システムの特長、そして今後の展望を紹介する。
日本の製造業を取り巻く環境は厳しさを増しており、その労働生産性は2000年1位から2021年18位と下落し続け、米国との差は2倍に近づいている(※労働生産性は労働投入量(労働者数 x 労働時間)を分母、付加価値額(もしくは生産量)を分子に計算)。極端に考えれば、労働時間を半分で同じ仕事量をこなすか、売上を2倍にしなければ追いつくことができない。
さらに、日本の労働供給は2040年には1,100万人の不足が予想され、何も手を打たなければ、縮小均衡に陥りかねない。
労働生産性が低い背景を深掘りすると、セールス・マーケティング領域に課題があると言える。製造業ではエンドユーザーにモノが届くまでにメーカー、卸・商社、販売店のサプライチェーンが存在し、その中で労働投入量が多くかかっている原因の一つは、取引情報がアナログであることがあげられる。
具体的には、商品選定に必要な商品情報は紙カタログ、注文・見積依頼など取引の多くはFAXで行われ、莫大なコストがかかっており、100名規模の中堅の工具卸であっても約3,000時間、20か月もの時間が紙から基幹システムへの転記作業に投下され、前後工程のメーカー、販売店でも同様に無駄が発生している。
また、付加価値額については成長著しいEC、海外の需要取り込みが非常に重要となっており、3大BtoB ECであるアスクル、ミスミ(vona)、モノタロウの売上はこの20年で700%成長し、1兆円規模に近づいている。
他方、業界全体に目を向ければ、エンドユーザーの行動変容への対応の遅れが目立つ。商品選定をするバイヤーの70%は営業担当にコンタクトする前にまずネット検索をする一方、販売する側のEC対応(受注システム、通販出店など)は8%にとどまるため、ミスマッチによる多大な機会損失が発生している。
需要があるにも関わらず、なぜEC対応ができないのか。それは既存の販売管理システムでは商品スペックや画像を取得・管理できないため、紙カタログからエクセルへの転記というアナログ作業に頼らざるを得ないためだ。
海外販路拡大に関しては、経済産業省レポート『成長投資が導く2040年の産業構造』(2025年4月)で、輸出促進による売上向上を図るべきとの提言があった。日本の製造業はそのGDP規模が近いドイツや韓国に比べ、輸出額が少なく海外展開はまだまだポテンシャルがある領域だ。一方で、中小企業においては海外事業に対応できる人材不足やコミュニケーションの課題を克服できておらず、その可能性を活かしきれていない。
日本の製造業では、セールス&マーケティング領域において50年以上もの間、大きな革新が起きていないのが現状だ。設計開発や調達、製造といったプロセスではデジタル化が進み、生産性が向上している一方で、紙カタログや展示会、電話・FAXによる受注といったアナログな手法が依然として主流であり、これが成長のボトルネックとなっている。
従来のオンプレミスの販売管理システムでは、品番や価格といった基本的な情報しか管理できず、膨大なスペック情報や商品画像を適切に管理することが困難となり、結果として、テキストと画像のマスターデータがばらばらに管理され、検索に時間を要したり、ウェブ連携ができなかったりといった問題が発生している。実際、SKU(最小在庫管理単位)の97.5%が未だデジタル化されていないというデータもある。
しかし、近年、EC市場の成長と共にPIM(商品情報管理)のグローバル市場も拡大しており、BtoB製品における複雑な商品情報を効率的に管理する必要性が高まっている。BtoB製品は、BtoC製品と比較してSKU数が100倍(20万SKU vs 2,000SKU)、商品属性数が15倍(300属性 vs 20属性)にも上り、そのデータ管理には多大な労力が必要だ。手作業でのデータ転記には1SKUあたり平均2時間を要し、毎月100時間かけても50SKUしか登録できないといった非効率な状況が見られる。
さらに、BtoB ECサイトの勃興や、危険物、医薬品、消防法、グリーン購入法、JIS適合といった法規制による管理項目の増加、さらにはCO2排出量やデジタルプロダクトパスポート(DPP)といった環境配慮型の情報開示の動きが加速しており、商品情報の管理はますます複雑化している。これらの背景から、製造業における商品情報管理の抜本的な改善が求められており、「monolyst」の開発はこうした喫緊の課題への解決策として生まれた。
「monolyst」は、商品情報と取引データの活用を推進し、AIを活用して商品マスタと取引データベースを自動作成する革新的なシステムだ。
本システムは、紙カタログやPDFから必要な商品情報をAIが自動で抽出し、整理する。これにより、スペック情報や商品画像のデータ化における手動での転記作業を「ゼロ」にすることができる。 解析後のデータはExcelと同様の操作性で自由に編集でき、製品と画像を紐付けて一元管理することで、複数のツールでの管理が不要となる。また、登録されたSKUは自動で製品リスト化され、任意の条件で検索・一括ダウンロードが可能なため、ECサイトへの提案にも活用ができる。さらに、製品リストを組み合わせてシリーズ管理やカテゴリ管理も柔軟に行うことができる。
「monolyst」で管理された商品情報は、紙のカタログを持ち歩く必要がなく、スマートフォンや画像検索に対応したデジタルカタログとして自動で生成され、外出先でも手軽に製品情報を確認でき、営業活動の効率化に貢献する。
商品マスタの情報に基づき、ロット数やカート機能、さらには掛け率マスタに従った得意先ごとの仕切価格表示が可能なウェブ受注システムを自動で構築する。特筆すべきは、顧客ごとに掛け率の設定をすることで、仕切価格をコントロールする機能だ。これにより、顧客は担当者へ価格の問い合わせをすることなく、注文プロセスを進めることができる。また、複数言語への自動翻訳に対応しており、翻訳にかかる手間やコストを削減し、海外展開をスムーズに進めることも可能だ。
1日1000枚ものFAX注文書が届くようなアナログな業務環境においても、「monolyst」はAIがメーカー、品番、数量などの注文内容を解析し、手書きや見積依頼を含む多様な書式の読み込みに対応。解析された注文データは基幹システムと連携可能で、商品マスタを参照して基幹システムが受け付け可能な品名・品番に自動補完されるため、手動入力によるミスや工数を大幅に削減する。
これらの機能により、「monolyst」は、従来手動で商品マスタを構築した場合と比較して、工数を大幅に削減し(例: 10万SKU分のカタログ解析で年間10,000時間の工数削減に相当)、人件費の削減にも寄与する。塗料専門商社のORSコジマ株式会社では、「monolyst」の導入により、AIが紙カタログを自動解析することで商品登録作業を9割削減し、ネット事業部の業務効率を大幅に改善した実績がある。
「monolyst」は、単なる商品情報管理システムに留まらず、商品情報を活用してセールス・マーケティング領域全体を効率化し、売上向上や各社の強み強化の実現を目指す。製品登録からマーケティング、販売、アフターサポートまで、サプライチェーン全体のデジタル化を推進することで、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に後押ししていく。
今後は、さらなる機能強化として、顧客管理(CRM)やメールマガジン配信(MA)、営業支援ツール(SFA)との連携、さらにはFAQや電話対応の自動化を支援するチャットBot機能の拡充も視野に入れている。
「monolyst」は、商品情報の「集める」「育てる」「活用する」という一連のプロセスをAIで最適化し、これまで非効率だった業務を革新することで、製造業の未来を拓き、より効率的で持続可能な情報流通プラットフォームとしての貢献を目指す。
伊関 洋介 monolyst株式会社 代表取締役 CEO
1988年生まれ、福岡県北九州市出身。東京外国語大学中国語専攻を卒業後、トヨタ自動車にてグローバルな需給調整業務やアフリカでのマーケティング活動支援に従事し、南アフリカ駐在を経験。その後、フリー株式会社にてクラウドERPのセールス、マーケティング、新規事業開発部長を歴任。自身の経験から「商品情報を整理すると世の中は今よりもっと良くなる」という信念のもと、monolyst株式会社を2024年4月に設立し、商品情報管理システム「monolyst」の開発・運営を行っている。
会社名:monolyst株式会社
〒:150-0043 住所:東京都渋谷区道玄坂1丁目19−9 第一暁ビル 7F
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e-mail:sales@mono-lyst.com
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