基板製造にかかわる企業・工場の多くで行われている、「部品受入作業」や「ラベル発行作業」。
これらの作業は生産設備を直接動かす工程ではないため、生産量や品質との関係が見えにくく、改善対象として優先されないケースも少なくない。
しかし、製造現場の安定稼働を支えるうえで、受入工程における正確な情報管理は重要な役割を担っている。
本稿では、部品受入作業に着目し、人的ミスの防止とトレーサビリティ強化の観点から、製造現場における部品管理の課題とその解決の考え方について紹介する。
受入工程で発生する登録ミスやラベル貼り付けミスは、その場で完結する問題ではない。なぜなら、受入工程で登録された情報は、そのまま在庫管理や実装工程へ引き継がれるからだ。もしミスが発生すると、トレーサビリティの信頼性が揺らぐだけでなく、製品の誤実装につながる可能性がある。影響範囲の調査や原因究明、現品確認などの手戻り工数が発生するだけでなく、最悪の場合、生産現場だけにとどまらず、企業全体へ大きなダメージを与えかねない。そのため、そもそも受入工程でミスを発生させないことが、生産現場の安定化に大きく寄与する。
しかし、現場での受入作業の実情を見ると、メーカーラベルの確認や品目コード変換、社内管理ラベルの発行や貼り付けなど、人手に依存する作業も少なくない。人的ミスがいつ発生してもおかしくない状況だ。作業者の注意力やスキルに頼るのではなく、ミスが起こりにくい仕組みを整えることが大切である。
ミスが起こりにくい仕組みとは、どのようなものだろうか。まず思い浮かぶのが、生産工程と同じように、作業者による判断や経験への依存を減らし、作業を標準化することである。作業指示書の整備による標準化も、作業のばらつきを抑える有効な手段である。しかし、本稿では作業者に依存した運用ではなく、システムによる仕組み化を通じて人的ミスを防止する方法を紹介する。
Incoming Material Station 2.0(IMS2.0)は、メーカーラベル認識、品目コード変換、社内管理ラベル発行を支援する部品受入登録システムである。
装置に搭載されたカメラが部品のメーカーラベルを認識することで、手入力や目視確認への依存を低減することが可能になる。
作業者は部品をセットし、認識ボタンを押し、発行されたラベルを貼り付けるというシンプルな流れで受入作業を行うことができる。これにより、作業手順を統一し、作業者のスキルによらず正確な作業を実現できる。
また、多くの実装工場では、メーカー品番(型式)と自社で管理する品目コードを分けて運用しているケースが多くみられる。そのため受入時には、メーカー品番を社内品目コードへ変換する作業が必要となるが、これらの作業も作業者に頼っている現場は少なくない。しかし、電子部品の品番は長く複雑な場合も多く、作業者に依存した作業では読み違いや選択ミスが発生する可能性が残る。1日、1週間、1か月と、間違いなく作業し続けることは容易ではない。
本来、部品受入作業は担当者の経験や熟練度によって品質が左右されるべきではない。誰が作業しても同じ結果が得られ、同じ品質を維持できることが理想である。
では、このようなメーカー品番の品目コード変換を、どのように簡単かつ確実に行うことができるだろうか。これもシステム化によりミスの発生を抑えることができる。IMS2.0では、事前に準備したExcelの対応表を利用してメーカー品番から品目コードへ変換できるだけでなく、同一メーカー品番であっても取引先ごとに品目コードが変わる複雑な運用にも対応しており、複数の取引先がある現場でも確実な変換を実現できる。
過去にミスを経験した現場では、その教訓から「貼り付け後の目視チェック」や「複数人での読み合わせ」などをルール化し、流出防止のための作業を行っていることも多い。後工程に流出しなければ、影響を最小限に抑えることができるからだ。
しかし、本来は作業者の注意力や確認の徹底によって品質を維持するのではなく、ミスがあっても後工程へ流出しない仕組みが構築されていることが望ましい。ラベル貼り間違いに代表される受入作業のミスの流出防止についても、やはりシステム化が有効である。
IMS2.0では、ラベル貼り付け後にリール全体をカメラで撮影し、メーカーラベルと貼り付けラベルの照合チェックを行うことが可能である。システムによる貼り間違いチェックが完了していないラベルのUID※1は、システムに登録されない。それにより、単純な貼り間違いの確認だけでなく、万が一の貼り間違いや作業者のチェック作業漏れ(未実行)があった場合も、後工程で活用されない仕組みを実現している。
作業者の確認に頼る一般的な運用と比べ、より信頼性の高い運用を実現できる。
※1 UIDとは、リール固有の識別番号であり、Unique IDの略である。リールにUIDを付与することで、在庫や使用履歴をデータとして管理できる。シリアル番号・DIDなどと呼ばれることも多い。
ここまでは、人的ミスの影響や防止について紹介してきたが、トレーサビリティの強化にも触れたい。近年、UID入りの社内管理ラベルを使用し、実装機の誤装着防止やトレーサビリティ管理を行うことが一般的になっている。問題発生時の追跡だけでなく、取引先から日常的にトレーサビリティ情報の提供を求められる現場もある。
しかし、問題発生時に情報を追跡しようとしても、必要な情報が残っていない、あるいは情報の特定に時間を要するケースは少なくない。また、トレーサビリティ強化のために管理項目を増やすほど、受入作業は複雑になり、現場の負担も大きくなる。
本来あるべき姿は、通常の受入作業の中で必要な情報が確実に記録され、問題発生時にはUIDを起点に、ロット番号や受入時の状態などへすばやくたどり着けることである。つまり、作業負荷を増やさずに、必要な情報を必要なときに確認できる状態が望ましい。
IMS2.0では、ラベル発行時のUIDやロット番号などの情報が自動保存され、受入時に撮影した画像とも紐付けて管理される。これにより、受入時点の状態を後から確認でき、確認対象となるUIDが付与されたリールの実物が、すでに廃棄されていても、保存された画像から多くの手掛かりを得ることができる。
その結果、通常の受入作業を行うだけでトレーサビリティに必要なデータが蓄積され、問題発生時の調査や影響範囲の確認を効率化できる。作業負荷を大きく増やすことなく、トレーサビリティの信頼性を高められる点が大きな効果である。
部品管理の品質は、在庫管理や実装工程だけで決まるものではない。部品を受け入れ、情報を登録し、現物と正しく結び付ける受入工程こそが、工程全体の出発点である。受入作業を標準化し、情報精度を高めることは、誤実装防止やトレーサビリティ強化だけでなく、製造現場全体の安定化につながる。作業者の注意力だけに頼る運用から、システムによる仕組み化で品質を支える運用へ移行することが、これからの部品管理に求められている。
2026年6月に開催されたJISSO PROTECにて製品・サービスをご紹介いただいた。