弊社は、前身の会社も含め約40年間にわたりドットピンマーキング装置の開発・販売を行ってきた。マーキング対象物へ文字や二次元コードをダイレクトにマーキングする方法としては、レーザーマーキング装置を用いることがトレンドになっているが、ここではドットピンによるマーキングならではの用途や利点などについて紹介する。
(1) ドットピンマーキングは、高速でペン先がマーキング対象物へ衝突することでマーキング対象物を凹ませる(ドット)手法であるが、使用するペンタイプによりペン先がマーキング対象物に繰り返し当たる周期や打刻力が異なり、マーキングされる文字の出来栄えや深さなども異なる。
(2) 弊社では、「圧縮空気により振動するエアペン」、「ソレノイドの磁力により振動する電磁ペン」、「圧電素子の収縮により振動する超音波ペン」の3種類をドットピンマーキング装置としてラインアップしている。特に超音波ペンは、弊社の独自技術である。
(3) 弊社のドットピンマーキング装置は、ペンを搭載した機構部と、ペンの振動および移動をコントロールする制御部から構成されている。装置の外観や詳細仕様は、以下の弊社HPより確認できる。
| ・ペンタイプ | ・Model | ・URL |
| エアペン(標準) | VM2010 | https://vecc.jp/products_detail/index12 |
| VM2020 | https://vecc.jp/products_detail/index3 | |
| エアペン(ハイパワー) | VM3770A | https://vecc.jp/products_detail/index9 |
| 電磁ペン | VM6040 | https://vecc.jp/products_detail/index4 |
| 超音波ペン | VM3730A | https://vecc.jp/products_detail/index8 |
(4)各ペンで打刻したマーキングの出来栄えや特徴・違いについて表1で説明する。


表1.ペンタイプによるマーキングの違い

(1)マーキング後の塗装が可能
ドットピンは深くマーキングできるため、他方式では塗装後に消えてしまうマーキングに対しても塗装が可能である。塗装後の出来栄えについては、テストマーキングを行い確認することができる。
(2)マーキング対象物へのストレスが少ない
(3)ペン先がマーキング対象物に接触するときの衝撃力は100~5,000Nと大きいものの、ペン先の極めて僅かな範囲への衝撃であること、またマーキング対象物が凹むことで衝撃が吸収されることから、マーキング対象物全体に対して衝撃ストレスはかからない。ただし、衝撃により破損するガラスなどに対しては、ドットピンは不向きである。
※ペンタイプや供給エア圧、ペンパワーの設定値により衝撃力が異なる。
(4)マーキング対象物の変色や化学変化がない
ペン先がマーキング対象物に接触することでマーキング対象物の表面に凹みができる以外の変化がないため、変色や化学変化などが嫌われる対象物へのマーキングに適している。
(5)盗難防止・模倣品対策
盗難品や模倣品を見分ける方法の一つとしてマーキングが挙げられる。
盗難後にマーキングされている文字や二次元コードを消去し、新たにマーキングを上書きすることで偽造されることがある。ドットピンマーキングでは、マーキングを消した跡が深く残るため、目視で偽造されていることが判別できる。特に、マーキング面が鋳肌や切削キズのある加工面である場合、より判別しやすくなる。また、模倣品対策として特殊なマークや記号などをマーキングすることも有効であるが、弊社独自の超音波ペンによるマーキングは、その出来栄えが他のドットピン方式では再現できないため、マーキングされた文字を確認することで模倣品対策の一つとして利用できる。
(6)トレーサビリティ・コンプライアンス対応
マーキングを行う目的として「生産管理」や「トレーサビリティ」が挙げられる。生産管理用のマーキングは生産時のみ使用できればよく、視認性や二次元コードの読み取りやすさが求められているが、トレーサビリティやコンプライアンス対応のためのマーキングは、生産から消費者へ納入された後も確認できる必要があり、時間経過や環境変化に強いマーキングが求められている。品質問題が発生したときの調査やリコールにおいて、部品そのものから情報を確認する手段はマーキングしかない。近年、要求が増えているリサイクル・リユースや環境汚染物質を含む部品などの廃棄については、部品の材質や化学物質含有情報なども、マーキングされている二次元コードをスマートフォンなどで読み取り、インターネットを介して入手することで対応が可能となる。
マーキングが時間経過や環境変化により消失しないよう、短時間で深くマーキングできるドットピンが使用されている。
(7)マーキングのフレキシブル性
外部機器とのシリアル通信により、マーキングする文字を簡単に変更できる。
ドットピンでは、ペン先の振動範囲内であればペン先とマーキング対象物との距離のばらつきを考慮することなくマーキングが行えるため、段差や斜面、曲面にもマーキングが可能である。
切削油などが付着したマーキング対象物へのマーキングや、粉塵・ミストなどがある環境でも、ドットピンマーキング装置は使用できる。
(8)熱処理でも消えないマーキング
ドットピンは、マーキング対象物の表面を物理的に深く凹ませるマーキングであるため、焼鈍しなどによる熱処理では消えない。マーキング後に熱処理を行う用途にも使用できる。
(9)高温なマーキング対象物へのマーキング
ドットピンの中でもエアペンは、マーキング中にペン内部からペン先にかけてエアが供給されるため、マーキング対象物の輻射熱の影響を受けにくく、鋳造機から取り出された表面温度が500℃以上のマーキング対象物にマーキングを行うことも可能である。
ただし、マーキングを行っていない待機状態では輻射熱の影響を受けるため、装置をマーキング対象物から遠ざける必要がある。
弊社では、マーキング対象物を預かってのテストマーキングを実施している。テストマーキングにより、実際のマーキングの出来栄えや深さ、マーキング時間などを確認することが可能であるため、マーキングをご検討されている場合は、ぜひ活用していただきたい。
弊社では、ドットピンの可能性を追求している。
(1)小さな二次元コードをマーキングすることで省スペースに多くの情報を記載することができる。
① シンボルサイズが18×18ドットのDataMatrixコードには、英数25文字を登録可能である。
※ 数字のみの場合は、36文字登録可。
② 18×18ドットのDataMatrixコードを従来11.7mm角から4.4mm角でマーキングする。
(2) マーキングの高速化により、マーキング時間を約30%短縮することで生産性向上に寄与するエアペンマーキング装置『VM1210AS1』を提供している。
また、新たなマーキング方法(マルチペン方式)により、マーキング時間の更なる短縮を目指し実現した、マルチペンマーキング装置『VM-M1』
(3) 鋳肌面へマーキングした二次元コードを読み取り易くするため、鋳肌面を均してから二次元コードをマーキングする試みを行っている。現在は、均し時間の短縮を目指している。
(4) 今後普及が予測されるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)へのマーキングにも取り組んでいる。リサイクルの要求が増えることで、マーキングの必要性が増すことが期待される。
ドットピンは、「二次元コードが読み取りにくい」、「マーキング音が大きい」などの理由から敬遠されるケースも少なくない。「二次元コードの読み取り」については、リーダの読取技術や画像解析技術の向上により、低価格の二次元コードリーダやスマートフォンのアプリでも簡単にストレスなく読み取れるようになってきている。
「マーキング音」については弊社でも長年の課題となっているが、リーダの読取精度が向上したように、近い将来、騒音低減もしくはマーキング音をキャンセルすることができる技術が実現すると期待される。弊社では、今後もドットピンマーキング装置の専門メーカとして、顧客のニーズに合わせた製品を取り揃えていく方針である。