はじめに
近年、EVをはじめとする多様なモビリティの普及に伴い、振動や温度変化など、過酷な使用環境にさらされる電子基板が増えています。
このような環境下でも信頼性を確保するためには、安定したはんだ付けが欠かせず、実装工程における重要な課題にもなっています。
従来の接触加熱方式では、こて先の劣化進行による状態変化や、スポットフローの液面変動によるばらつきが課題とされています。
これらの課題に対する有効な解決策として、私たちスフィンクス・テクノロジーズは、誘導加熱(IH)技術を活用した“非接触”方式のはんだ付けに着目しています。
パワーエレクトロニクスをコア技術とする私たちは、独自の磁界制御技術を用いた局所IHはんだ付け装置「S-WAVE」を開発し、従来工法を上回る良品率を実現。そして、今回ご紹介するS-WAVEの新製品「FBA-Series」は、基板搬送機構と局所IHユニットを融合させた次世代の高効率・高精度はんだ付け装置です。今後、幅広い製造現場での実装工程に大きく貢献するものと確信しています。
IH(Induction Heating)を応用したはんだ付け装置「S-WAVE」は、部品の端子と基板ランドを電磁誘導により直接加熱する“自己発熱"方式です。
加熱ヘッド先端の磁束集中構造により、狙った端子とランドだけを局所的に発熱させます(図1、図2)。
端子温度が約240℃に達すると、はんだを供給して溶融させます。その際はランドも昇温しているため、溶融はんだはスムーズにランド端やスルーホールへ流動し、十分に充填されたはんだフィレットを形成します。
さらに、この方式では加熱が非接触で行われるため、高温の溶融はんだによって加熱ヘッドが劣化することはありません。
また、投入したはんだは全て接合に使用されるため、毎回同一条件での定量はんだ付けが可能となり、接合品質の安定化につながります。
作業者や挿入機によって部品搭載された基板に対し、裏返すことなくそのまま加熱・はんだ付けが可能なため、部品を支える治具が不要となります(写真1)。
さらに、磁界を活用するIH方式により、はんだをスルーホール下部から供給してもスルーホール内へ濡れ上がり、良好なフィレットを形成します。
これにより、低コストかつ高品質なはんだ付けを柔軟に行うことができ、多品種生産ラインの実現に大きく貢献します。
ローダ/アンローダ一体型構造により、基板の自動搬送を実現します。
さらに、部品挿入機、プリヒータ、検査装置などと連動させることで、はんだ後工程における一貫ラインを構築できます(図3)。
これにより、より効率的で生産性の高いシステムの実現に貢献します。
段取り替えは全自動で行われ、複数サイズの基板にも1台で対応可能です。
幅可変の基板搬送機構(写真2)により、80mmから400mmまでの幅広い基板に対応し、小型モジュールから大型制御基板までカバーできます。
さらに、品種混在の混流ラインにも対応可能で、レシピ切り替えはプログラムで自動化されており、切替作業時間をほぼゼロに抑えられます。
これにより、作業者の手作業を最小限に抑えつつ、生産性を向上させます。
はんだ付けにおいて優れているのは、IH強度・加熱時間・ヘッド位置をポイントごとに調節できる点です。
加熱は「端子昇温→本加熱(はんだ投入)→後熱(フィレット形成)」の3段階で行い、端子の大きさ・材質・放熱特性・基板の熱容量に応じて設定します(図4)。
端子およびランドの“自己発熱”ゆえの優れた応答性を活かし、IH強度は0.1秒単位で精密に設定可能です。これにより、ワークごとに最適な加熱プロファイルを与えることが可能です。
また、端子(+部品本体)と基板の組み合わせに応じて、熱容量のミスマッチをヘッド高さを調節することで吸収できます。図5は、端子昇温時にヘッドを熱容量の大きな基板に近づけることで、はんだ供給前のランド昇温不足を回避する例です。
このような細かな調節により、ポイントごとの最適条件設定が可能となり、はんだの濡れ広がりを安定化できます。
その結果、良好なフィレット形状やスルーホールの十分な充填を実現し、高品質な実装を可能にします。
IH方式は熱源自体が劣化しないため、ヒーターユニット(加熱ヘッド)の交換は不要です。
また、連続稼働中に付着するフラックスは、自動清掃オプション「S-WASH」により効率よく除去でき、保守の手間を軽減します(図6)。
さらに、温度チェッカー「S-COPE」を使用すれば、毎日の始業前に加熱力を自動点検でき、管理・保全作業にかかる時間を大幅に削減できます(図7)。
加えて、装置全体の消費電力も低く、長時間の連続稼働においても高いエネルギー効率を維持できます。

「FBA-Series」は、「はんだ品質の安定」「作業の自動化・省人化」「エネルギー効率の向上」という複数の課題に、1台で応えるソリューション装置です。
今後もスフィンクス・テクノロジーズは、非接触加熱技術のさらなる進化とお客様の現場課題解決を両立する装置開発に挑戦し続けます。IH加熱の可能性を、より多くの製造現場にお届けするため、製品提供とサポートの両面で、最適な提案を行ってまいります。
