特集記事

  • HOME
  • 特集記事
  • TIMの熱伝導率・熱抵抗 受託測定サービスのご紹介 ― カタログ値だけではわからない放熱性能の定量化 ―
編集企画 2026.07.13

TIMの熱伝導率・熱抵抗 受託測定サービスのご紹介
― カタログ値だけではわからない放熱性能の定量化 ―

株式会社ケミトックス 徳永/須藤

プリント基板関連ピックアップ記事 TIMの熱伝導率・熱抵抗 受託測定サービスのご紹介
― カタログ値だけではわからない放熱性能の定量化 ―

1 はじめに

近年、SiCやGaNをはじめとする次世代パワー半導体の自動車・鉄道などへの適用や、AI・データセンター向け半導体の消費電力の増加に伴い、電子機器の高発熱化が進み、放熱性向上の要求が年々高まっている。なかでも、発熱部品とヒートシンクの熱的接触を仲立ちする放熱グリースやシートをはじめとするTIM(Thermal Interface Material)の役割が重要になっている。

TIMのデータシートには必ず熱伝導率が記載されており、この値を材料選定の指標とする場合が多くある。しかし、こうして選定したはずのTIMが、実機では期待通りの性能を示さないことがある。この問題の鍵を握るのが「接触熱抵抗」である。本稿では、TIMの熱評価の現状と、弊社が提供する熱伝導率・熱抵抗の受託測定サービス、およびその測定事例を紹介する。

 

2 TIMの放熱性能を決める二つの要素

発熱体と放熱部材の表面は一見平滑に見えても、微視的には無数の凹凸があり、直接接触させると両部材はほとんどの部分で空気を介して接することになる。TIMは、微細な凹凸を埋められる柔軟さと空気よりも高い熱伝導率を併せ持つ材料でこの空隙を埋め、放熱性を改善する(図1)。

図1. 微細な接触とTIMのイメージ

TIMには、柔軟性のあるシート状のもの、グリース状のもの、温度によって形態が変わる相変化材料、極めて高い熱伝導率を持つ液体金属など複数の形態があり、用途や実装性、要求される放熱性能によって使い分けられている(図2)。

図2. 代表的なTIMのイメージ

ここで重要となるのが、熱伝導率と熱抵抗である。熱伝導率は材料の形状や寸法に依存しない材料固有の物性値であるのに対し、熱抵抗は厚みや面積など実装状態を反映した量であるという違いがある。TIMを発熱体とヒートシンクの間に挟んだときの全体の熱抵抗は、「TIM自身の熱抵抗+接触熱抵抗」として表される。前者はTIMの熱伝導率と厚みからある程度見積もることができるが、接触熱抵抗はデータシートには記載されない。熱伝導率が高くても接触熱抵抗が大きい材料は、特に薄く使用する場合に思わぬ熱抵抗を生じることがある。TIMを正しく評価するためには、熱伝導率と接触熱抵抗の両方を把握する必要がある。

 

3 熱伝導率測定方法

熱伝導率の測定方法は、試料が定常状態に達したときの温度分布から熱伝導率を求める定常法と、試料を発熱させた際の過渡応答から熱物性を求める、レーザーフラッシュ法のような非定常法に大別される。TIMの評価では、試料を上下のメーターバーと呼ばれる金属ブロックで挟み、定常温度差から熱抵抗を求めるASTM D5470に基づく定常法が代表的である。測定環境が実際の実装環境に近く、熱伝導率に加えて接触熱抵抗の比較も可能である点が、この方法の大きな特長である。

一方で、低熱伝導率の材料に対してはメーターバーからの熱漏れが、高熱伝導率の材料に対しては接触熱抵抗のばらつきが、それぞれ測定精度に悪影響をもたらすというデメリットもある。

 

4 ケミトックスの熱伝導率受託測定サービス

弊社では、こうした課題に対応するため、ASTM D5470の考え方を踏まえつつ、パワーデバイス向けの過渡熱抵抗測定装置(T3STER)を応用した独自の試験系を構築し、TIMの受託評価サービスを提供している(図3)。

図3. 試験系の模式図 ASTM D5470(左)と過渡熱抵抗測定装置を応用した試験系(右)

本試験系では、ヒーターとメーターバーの代わりに、半導体デバイスそのものを発熱源として用いる。加えて半導体チップの電気特性は温度に鋭敏に反応するため、デバイス自体を温度センサーとして利用できる。これにより熱電対よりも高精度な温度測定が可能となり、また発熱量がほぼすべて試料を通じてコールドプレートに流れるため、メーターバーを省略できる。

測定の方法としては、まず試験系全体の「累積熱抵抗」を測定する。同一試料でTIMの厚みのみを変えると、厚みの変化に対応する位置で曲線が分岐し、TIMが厚いほど累積熱抵抗値が大きくなる(図4)。

こうして厚みを変えた測定結果を解析することで、TIMの熱伝導率と接触熱抵抗を分離して求めることができる。実際の半導体デバイスを発熱源とするため、実機により近い条件でTIMの放熱性能を評価できる点も特長である。

図4. 厚みを変化させたときの累積熱抵抗測定例

 

5 測定事例

市販のグリース2種、シート状TIM2種について、厚みを変えて累積熱抵抗を測定し、熱伝導率と接触熱抵抗を求めた事例を紹介する。主な測定条件を表1に示す。

表1. 測定条件

項目 設定値
試料サイズ 15×15mm
測定厚み(グリースA・B) 50、100、200µm
測定厚み(シートA) 0.4、0.9、1.25mm
測定厚み(シートB) 0.9、1.25、1.5mm
コールドプレート温度 25℃

厚みごとの熱抵抗値を図5に示し、得られた熱伝導率と接触熱抵抗を、データシート記載値とあわせて表2にまとめる。

図5. 熱抵抗値の測定結果

 

表2. 熱伝導率、接触熱抵抗の測定結果

試料 熱伝導率カタログ値
(W/(m·K))
測定熱伝導率
(W/(m·K))
接触熱抵抗
(cm2・K/W)注1
グリースA 3.10 2.54 0.20
グリースB 0.90 1.10 0.56
シートA 1.61注2 1.68 0.36
シートB 2.20 2.65 2.07

注1:グラフ切片から試験系の熱抵抗1.35 (K·cm2/W)を減算して算出
注2:カタログ値不明のためASTM D5470準拠のTIMテスターでの測定値を参考値として記載

測定された熱伝導率はおおむね、カタログ値やASTM D5470準拠の測定結果と同程度の値を示しており、本試験系の妥当性が確認できる。一方、接触熱抵抗は材料によって大きく異なる。たとえばシートBは4材料中で最も高い熱伝導率を示したにもかかわらず、接触熱抵抗は他の材料より一桁近く大きい値となった。このような材料を薄い状態で使用すると、接触熱抵抗が大きくなり、カタログの熱伝導率から期待されるほどの放熱性能が得られない場合がある。実際の使用環境に近い状況での測定を行うことができ、カタログ値だけでは見えないこうした差を定量化できることが、本測定の利点である。

 

6 おわりに

接触熱抵抗はTIM単体で決まる量ではなく、塗布・貼り付け先の表面状態や荷重条件にも左右される。そのため、データシートから読み取ることはできず、実際の使用環境に近い条件での比較評価が不可欠である。

弊社のTIM受託評価サービスでは、熱伝導率と接触熱抵抗を分離して定量化し、お客様の材料選定や熱設計を支援いたします。TIMの放熱性評価でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

株式会社ケミトックス 徳永/須藤

株式会社ケミトックスは、材料および製品の安全性評価・化学分析に特化した独立系の第三者試験機関です。ULの公式試験受託(CAP)認定に基づく高度な評価技術により、UL94(燃焼性)試験やRoHS/REACHなどの環境規制物質分析において迅速かつ確実な適合評価を実現し、企業のグローバルな製品開発と安全コンプライアンスを強力にサポートしています。

https://www.chemitox.co.jp/
基板関連工場の
無料登録 のご案内
貴社の設計、製造、実装の仕様、製造実績の登録をお願いします。