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IC・電子部品 2023.12.07

来春に倉庫拡張、低迷が続く半導体市場で躍進するネット商社マウザー・エレクトロニクスの戦略

基板の窓口編集部

来春に倉庫拡張、低迷が続く半導体市場で躍進するネット商社マウザー・エレクトロニクスの戦略

最新の半導体・電子部品の幅広い品揃えと、新製品の迅速な市場投入を誇るネット販売商社のマウザー・エレクトロニクス(Mouser Electronics、本社: 米国テキサス州マンスフィールド、以下:マウザー)は、11月16日、東京・品川にて2023年の事業概況や戦略についてのメディア向け発表会を3年ぶりに開催。

新型コロナウイルス感染拡大の5類感染症への移行や、半導体市場の低迷が続く中でもめざましい業績を伸ばしている同社。2024年春には巨大倉庫を拡張し、グローバルでのオンライン購入ニーズに応えていく計画を明かした。

 

グローバル市場低迷  「チャレンジングな一年」をレビュー

世界中の主要電子部品メーカーと提携し、1,200を超える電子部品ブランドの正規代理店として豊富な在庫を誇る同社。

販売実績では、2020年の総売上2億ドルからわずか2年で売上を倍増させ、2022年には4億ドルに到達。

一方、2023年の業績について、グローバルサービス&EMEAおよびAPACビジネス担当兼シニア・バイス・プレジデントを務めるマーク・バーロノン氏は「チャレンジングな年」と評した。
 

マウザー・エレクトロニクス シニア・バイス・プレジデント マーク・バーノロン氏

マウザー・エレクトロニクス シニア・バイス・プレジデント マーク・バーノロン氏


世界的なインフレや資源価格の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻などによる消費への影響を受け、2023年上半期のアジア地域での売上は、中国からの需要減退が尾を引き、昨年比マイナス17%まで落ちこんだ。

しかし、グローバル全体としては横ばいを保っており、同氏は「アメリカ、ヨーロッパでは製品の購入者数が好調であり、アジア地域の購入者数としてはマイナス2%にとどまっている。個人アカウント数の増加も後押しとなり、2024年には市場の戻りを期待しているが、しばらくは厳しい時期が続くだろう」と市況を読んだ。
 

 

倉庫拡張により、世界規模でのオンライン購入ニーズに応える

現在1,200を超える製品ブランドの豊富なラインナップを揃え、最新の製品と豊富な在庫により、すばやい調達を可能にする同社。受注から出荷まで同日での手配が可能で、遅くとも出荷までに24時間を超えることはないという。

「他社と比較し、製品の深さよりも取り扱い幅に強みを持っている。特に、半導体の取り扱い品数は60万点を超え、業界内でも存在感を放っている」(同氏)と自信をのぞかせる。

同社の大きな特長として、それらすべての商品の在庫や物流管理を、アメリカ・テキサス州に構える広大なマウザー本社で一括して行っている点が挙げられる。
 


本来、集中型の物流拠点は、即応性の点で不利を指摘される。しかし、同社はあえて集中型をとることで「ECサイト上は在庫があるものの、保管拠点が異なるために出荷に時間がかかる」という問題を解決。

全世界の電子部品メーカーが提供するパーツを本センターに集約させることで、各地の拠点からリアルタイムに在庫状況確認、発注・出荷の手配が可能となる。

その上で、強力な配送サービスを整備することで、ユーザーがどこの国から発注した場合でも、速やかで信頼性の高い配送サービスを利用する環境を構築した。

世界中からのオンライン購入ニーズに応えるため、VLM(垂直リフトモジュール)やロボットなどのオートメーションを積極的に導入し、2001年から倉庫の拡張を続けてきた同社。

2024年春には、61.3万平方フィートの広大な新棟を開設予定しており、現在建設が進められている。新棟には、20の自動出荷ラインを設置することで、出荷能力は2倍の向上を見込む。
 

 

「ネット販売商社」への追い風となったコロナ禍

2015年の日本オフィス開設以来、日本での業績も順調に伸ばしてきた同社。2022年には、2015年時と比較し、販売金額8倍、顧客数は6倍までに成長を遂げた。その売上のおよそ6割は半導体製品が占め、汎用部品、コネクタ、メーカー部品と続く。
 


特に、2021年から2022年にかけて大きく数字を伸ばした要因として、本社副社長兼日本総責任者の勝田治氏は、新型コロナウイルスによる世界的パンデミックの影響による供給不足が好機となったとふりかえる。
 

マウザー・エレクトロニクス 本社副社長兼日本総責任者 勝田治氏


「あらゆる物が不足し、半導体を中心とした電子部品の不足も深刻化していた中、ネット部品商社にアプローチするお客様が増え、『マウザーなら商品が買える』ということが浸透していった」(勝田氏)

感染拡大対策での外出自粛により、ビジネスシーンにおいても顧客との接触に制限があった中でも、オンライン上でワンストップに商品購入完了まで行えることも功を奏した。

さらに、取引用口座がなくとも支払いさえできれば購入可能な手軽さや、製品1点から購入できる利便性も評価され、認知拡大につながったと分析する。
 

オンラインを駆使し、ネット販売商社としての地位を着実に築く

同社では、新規顧客やリピーターのさらなる増加や、顧客の商品理解を深めるため、さまざまな施策を行っている。

その中でも、ネット販売商社として、オンラインツールの積極的な活用や、公式サイトの充実は特筆すべき点である。

同社が無料で提供するBOMツール「Forte」(部品表)は、同社公式サイトに掲載されている3,500万登録品番数から、設計に適した部品をいち早く正確に探し出すことができる。
 

 

▼BOMツール「Forte」公式サイト
https://www.mouser.jp/bomtool/

▼BOMツール「Forte」の使い方を解説
https://jpcb.jp/pickup/?m=detail&pkid=319
 

購入用部品をリストアップし、大量の電子パーツの価格や在庫状況を調査・手配する作業の負担を軽減できるだけでなく、そのままサイト上から手配まで行える点は、商品購入までの動線設計としても効果的に機能しているだろう。

さらに、新製品の詳細ページリリースにも注力する。他社との差別化を図り、まだ顧客がいない新製品の顧客を開拓するため、2022年には約3,200製品の詳細ページをリリースし、1,600万を超えるPVを獲得した。
 

マウザー・エレクトロニクス APACマーケティング担当兼副社長のダフネ・ティエン氏


APACマーケティング担当兼副社長のダフネ・ティエン氏は、「新製品の紹介促進は業界の鍵。どれだけ早く新製品のサイトを立ち上げられるかに注力している」と語り、サイト立ち上げまでにかかる時間について、2019年には28日かかっていたところ、2022年には6.5日まで短縮したという。
 


オンラインを戦場とする同社において、コロナ禍をきっかけにあらゆるシーンでのオンライン化が加速したことで、電子部品調達ももれなくネットにシフトしたことも好機となったが、業界の若い世代は業務の主軸をネット上に据えていることも、同社が支持を集める理由である。

その他の施策として、最先端エンジニアリングについて発信するテクニカルコンテンツの配信や、オリジナルの電子工作作品を募るコンテスト「Mouser Make Awards 2023」の開催、新製品やBOMツール「Forte」をアニメーションで紹介するなど、若い世代のエンジニアの技術向上支援や、業界発展にも寄与していく狙いがある。
 


半導体市場の低迷も続く中、オンラインをフィールドに着実に業績を伸ばし、来春には巨大倉庫の拡張によりさらなる成長を見据える同社。

「パーツの数は多すぎるということはない」と品揃えへの貪欲さを武器に、業界を牽引していくマウザーの2024年に期待したい。

 


▼マウザー・エレクトロニクス公式サイト
https://www.mouser.jp/

▼BOMツール「Forte」公式サイト
https://www.mouser.jp/bomtool/

▼BOMツール「Forte」の使い方を解説
https://jpcb.jp/pickup/?m=detail&pkid=319

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