2023年11月15日(水)〜11月17日(金)、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、エッジテクノロジーの総合展示会である「Edge Tech+ 2023(エッジテックプラス) 」(主催:一般社団法人 組込みシステム技術協会、企画/推進:株式会社ナノオプト・メディア)が開催される。
300社の出展(うち新規118社)を見込み、近年めざましい進化を遂げるAI・生成AIをはじめ、IoT・組込み・セキュリティ・ワイヤレスなどのエッジテクノロジーに加え、応用産業分野への実装、事業変革のキーとなるソフトウェア、クラウドネイティブ、アジャイル、リーン、リスキリングなどに関する最新の知見や技術が集結する。
入場は無料。来場者登録制の本展は、公式サイトから来場登録を行えるほか、会場でも登録できる。
本記事では、11月8日に開催されたEdge Tech+ 2023 の概要や企画趣旨に関するプレス説明会の内容をもとに、見どころについて紹介する。
1986年に「MST(Microcomputer System & Tool Fair)」としてスタートした本展は、2002年に「組込み総合技術展」への改名、2015年に「IoT総合展」との併催を経て、事業変革を推進するための最新技術とつながる総合展である「Edge Tech+」へと時代の変容に応じた進化を遂げてきた。
Edge Tech+ 2023 では、昨年に引き続き「エッジテクノロジーに新たなプラスで加速するDXと事業変革」をコンセプトに据え、AI・生成AI、IoT、組込み、セキュリティ、ワイヤレスなどのエッジテクノロジーを軸に、応用産業分野への実装や、ソフトウェアファーストをはじめとする事業変革のキーワードとのかけ合わせにより、顧客起点の価値創出を実現するイベントを目指す。
300社(うち新規118社)の出展を見込む本展では、「設計開発サービスパビリオン」「電子設計・EDAパビリオン」をはじめとする7つのパビリオンや、生成AIに特化した「生成AI活用ゾーン」、さらには初開催となる「オートモーティブ ソフトウエア エキスポ」や、画像認識・解析AIm技術が集う「Vision AI Expo」により、本展のコンセプトを体現する構成となっている。
出典:会場図・出展社一覧|ナノオプト・メディア
左:一般社団法人組込みシステム技術協会 渡辺 博之氏
右:株式会社ナノオプト・メディア 大嶋 康彰氏
出典:ナノオプト・メディア
注目の企画として、今年から新たに加わった、SDV時代の自動車開発とソフトウエア技術にフォーカスし、関連する技術やソリューションの最新動向が集う「オートモーティブ ソフトウエア エキスポ」は必見である。
自動化やEV化などの流れを受け、100年に一度の大変革時代と称される自動車業界。一般社団法人組込みシステム技術協会の渡辺 博之氏は、「自動車産業は大きな転換点にあり、日本を代表するものづくりとして最後の砦の産業とされる中、ソフトウエアでの開発や付加価値が重要となる。その上で、オートモーティブ ソフトウエア エキスポでは、実際の自動車の製造現場で役立つ開発ツールやその活用法をはじめ、開発支援を行う企業についても知ることができる」と語る。
本企画のイベント構成として、40社/団体が軒を連ねる展示ゾーンに加え、300席規模の特設セミナー会場も設置。会期3日間を通して、ソフトウエア技術に特化した34の基調講演・分科会を予定している。
出典:ナノオプト・メディア
開幕初日の11月15日(水)には、テスラモーターズジャパン エナジープロダクツ インサイドセールス&マーケットデベロップメントマネージャーの夏目 利沙氏による「テスラのミッションと国内外における取組み」と題した基調講演を実施し、Edge Tech+ 2023 の幕開けを飾る。
その他にも、トヨタ自動車 デジタルソフト開発センター フェローの村田 賢一氏、マツダ エグゼクティブフェロー イノベーションの人見 光夫氏などが登壇し、SDV時代の自動車開発やソフトウエア技術にフォーカスしたセッションが繰り広げられる。
また、展示特別企画として、会期3日間にわたり「テスラ特別試乗会」を開催。テスラ社のミッションと国内外での取り組みに関する講演聴講後には、会場内で現物のテスラに乗り込み、開放的な車内を体験することができる。
出典:オートモーティブ ソフトウエア エキスポ | EdgeTech+ 2023
併せて会場内では、テスラ車両展示および、テスラ家庭用蓄電池Powerwallも展示が予定されている。
カンファレンスでは、3日間にわたり4分野(EdgeTech+/DX/EdgeTech/Automotive)からなる150セッションの基調・特別講演、テーマ別セッションを開催。
ソフトウエアファースト、クラウドネイティブ、DevOps、アジャイルなど事業変革に関わるトピックスを扱う「EdgeTech+」分野では、日本マイクロソフト コーポレート戦略統括本部 業務執行役員 エバンジェリストの西脇 資哲氏によるChatGPTの活用に関する講演や、アマゾン ウェブ サービス ジャパン エンタープライズ技術本部の関谷 侑希氏によるAWSの生成形AI入門など、生成AIを主軸に据えたテーマが目立つ。
中でも注目のセッションとして、EdgeTech+ 2023カンファレンス委員長の山田 敏行氏は、山下技術開発事務所 代表の山下 克司氏による「ChatGPTはどう言葉の意味を理解しているのか?」を挙げ、活用法を紹介するセッションは数多くある中で、自然言語処理における生成AIの基本的な動作原理を解説したセッションは希少であると語気を強めた。
出典:ChatGPTはどう言葉の意味を理解しているのか?|EdgeTech+ 2023
さらに、AI、IoT、ワイヤレス、組込みなどエッジテクノロジーに関するトピックスを扱う「EdgeTech」分野、DX推進に関する取り組み事例をはじめとする最新トピックスを扱う「DX」分野、自動車開発におけるソフトウエア技術に関するトピックスを扱う「オートモーティブ」分野を設け、旬の技術テーマについてトップランナーが解説を行う充実の内容となっている。
左:Edge Tech+ 2023 カンファレンス委員長 山田 敏行氏
右:株式会社ナノオプト・メディア 大嶋 康彰氏
組込み業界の発展と国内産業の競争力向上に寄与する製品・サービスを表彰する「Edge Tech+ AWARD 2023」は、11月8日に行われたプレス発表会にて、一次選考通貨企業および受賞各社が発表された。
Edge Technology 優秀賞を受賞したスタッフの「メタシンク™ アンテナ」は、金属の筐体に取り付けた状態でも高い性能を実現できる無線アンテナとして、アンテナ感度が低下する問題を解決する。
同社が得意とする端末との協調設計技術とアンテナ小型化技術により、アンテナ直下への電子部品配置や電子タグなどの幅広い端末に利用できる(特許出願中。金属で遮蔽された空間を除く)。
LPWA、Bluetooth、Wi-Fi、RFIDタグなどの無線通信に適用でき、通信距離を約3倍に伸ばせる。金属体以外でも使用可能で、金属体への取り付けでの性能低下をアンテナ単体で改善する。
このユニークな発想と新境地を開く提案は満場一致で受賞となり、日本社会の諸問題に対する有用な無線技術の適用範囲を広げる提案も高く評価された。
基板のスリット構造により小型・薄型化を実現
出典:EdgeTech+ AWARD 2023 | EdgeTech+ 2023
AI / 生成AI 優秀賞を受賞したエクスモーションの「CoBrain」は、生成AIを活用し要求仕様の作成とレビューを支援するサービスとして、コンサルタント依存の工数や専門知識育成時間を削減する。
Q&AボットとAIレビューにより要求仕様を作成・添削でき、AzureのGPTモデルを用いる大規模言語モデル(LLM)は、応答最適化、高速化、品質と信頼性向上のためのRAGを利用する。USDM形式の要求仕様書のナレッジは、LLMの品質向上の外部知識リソースとして用いた。生成AIは、要求仕様の作成とレビューに焦点を当てる。
生成AIの活用においては、プログラミング効率化に焦点が当てられるケースが多い中、要求仕様の作成とレビューという着眼点が評価された。
併せて、生成AIが注目を集めてまもない時期でのリリースという市場開拓性もプラスとなった。
出典:EdgeTech+ AWARD 2023 | EdgeTech+ 2023
表彰式は会期2日目の11月16日(木)16時15分より、展示会場内のセンターステージにて行われる。また、11月15日(水)、11月16日(木)には受賞各社によるスペシャルピッチも開催される。
▼Edge Tech+ AWARD 2023 詳細
https://www.jasa.or.jp/expo/event/award.html
【Edge Technology 優秀賞】「真空コンピューターSealed Edge」(ファナティック)
腐食性ガスや液体、粉塵に接する・囲まれるといった厳しい環境で使用できる産業用コンピューター。高い気密構造の筐体とCPUボードを冷却する液冷システムに特徴を持つ。
ユニークな発想とともに、「真空コンピューター」というネーミングは巧妙であり、企画力とともにブランディングも評価された。
【IoT Technology 優秀賞】「EJ5340」(加賀FEI)
ARM®︎ Cortex®︎ M33ベースのプロセッサを2つ搭載し、それぞれでアプリケーションとネットワークの処理を実行可能な無線通信モジュール。
アプリケーション実行用とネットワーク処理用の2個のプロセッサをコーヒー豆大のサイズにし、ホスト用マイクロコントローラを不要とすることで使い勝手と性能を高めた点には「小型化に敬意を表す」との声も上がった。
【IoT Technology 優秀賞】「IoT Security Assessment」(キーサイト・テクノロジー)
無線レイヤーからアプリケーション・レイヤーにわたる、IoT機器のセキュリティチェックの自動化が可能なテストツール。
BluetoothやWi-Fi、Ethernetを利用した通信に対応し、脆弱性診断や未知の脆弱性をチェックするファジングテストなどの機能を備える。
計測器の領域とソフトウエアの領域の両方を実現した点が評価された。
【オートモーティブ ソフトウエア 優秀賞】「RoadRunner Scenario」(MathWorks Japan)
マウス操作で車両や歩行者の配置や動作(軌跡)、車線変更などを指定し、ADAS(高度運転支援システム)やAD(自動運転)向けテストシナリオを作成するツール。
自動車エンジニアにとって馴染みのあるMATLAB/Simulinkと連携させることができる利便性に注目し、トータルのソリューションとしての価値が高く評価された。
【IoT Technology 優秀賞】「Foretify」(Foretellix)
自動運転(AD)や先進運転支援システム(ADAS)のベリフィケーションとバリデーションに不可欠なシナリオの自動作成と、そのシナリオで不具合を生じさせるシーンの自動探索を可能にしたテストツール。
制約付きテスト生成の手法は以前から存在するが、AD/ADASへの適用に焦点を当てた点が評価された。
【JASA 特別賞】「Φ Ring」(MedVigilance)
精度の高い健康情報の収集機能とNFCによる個人認証機能を備えた指輪型健康管理トラッカー。
歩数、カロリー、心拍数、睡眠分析、心拍変動を測定でき、利便性とセキュリティ性を高めた。
高齢化社会にマッチした製品であり、ヘルスケアのみならず医療機器としての高いポテンシャルが評価された。
全来場者登録制の本展は、公式サイトから入場事前登録を行うことで、当日のスムーズな入場ができる。
\Edge Tech+ 2023 来場事前登録はこちら/