多層プリント配線板を成形するプレスの能力不足を解消するため、あるいは品質や生産性を向上させるために様々な積層成形法が検討されました。これは、1980年代に主に米国から始まった動きで、多層プリント配線板の成形に関するものが多くありました。その結果、新しい用語が作られました。
筆者は1984年頃、米国のロバート・カーター氏が航空宇宙用に使用している設備で何やら新しい実験をしているとの情報を得ました。そこで内層材とプリプレグを持参して、カリフォルニア州オレンジ郡にあるジョン・ウェイン空港でカーター氏にお会いし、新しい方式による試作実験を依頼しました。
それはその後判明したのだが、『真空成形』技術で、品質に優れる方式であることが判明しました。米国から紹介された真空プレス機は、日本製鋼所で国産化されました。そして在来のプレス機もフレーム枠で真空する方式からボックスでプレス機全体を囲んで真空にする方法へと進化していき、現在は真空下で成形するのが当たり前となりました。
写真1 日本製鋼所製 潜水艦型真空プレス機
当時、多層板に関する用語は米国の『Printed Circuit Fabrication』『Circuits Manufacturing』などの雑誌で紹介されました。それでは、多層プリント配線板の成形に関する用語について紹介しましょう。
用語 | 用語の解説 |
リラミネイトRelaminate | 積層板メーカーが多層用材料をプリント配線板メーカーに納入し、プリント配線板メーカーで内層回路を形成します。その回路を積層板メーカーに戻し、成形のみを積層板メーカーで実施します。そして、再度、プリント配線板メーカーに戻し、プリント配線板を完成させます。この方式をリラミネイトといいます(マスラミネーションが導入された初期の頃はプリント配線板メーカーのプレス能力不足から、この方式が採用されました) |
マスラミネーション |
リラミネイトから一歩進展したもので、積層板メーカーで内層回路を形成し、成形後、プリント配線板メーカーに納入し、多層プリント配線板を完成させる方式をいいます(マスモールディング〈Mass Molding〉とも呼称します) |
ピンラミネーション |
多層プリント配線板を成形する際に、位置ずれ、ずれ出しなどの防止にピンで固定して成形するものをいい、6層板以上の多層プリント配線板を成形する際に用いられます |
ピンレスラミネーション Pinless Lamination |
本来、ピンで固定する必要がありますが、ピン以外で固定する方法を採用したもので、生産性向上の目的で実施するものです |
シーケンシャルラミネーション |
回路を形成して、成形後、再度、回路を形成して成形、つまり、順次高多層にしていく方式(特にバイアスルーホールがある場合に使用される) |
バキュームラミネーション |
真空下で成形する手法をいいます。潜水艦型の真空プレス機と在来プレス機に熱板ごとにフレームを付けて真空する方式、さらに在来のプレス機を囲って真空にするボックス型の真空方式があります |
ホリゾンタルマッシング |
大形プレス機を用いて、マスラミネーション方式で製造する際、1枚の中に多面取りをすることいいます |
バーティカルマッシング Vertical Massing |
プレスの1段当たりの仕込み枚数と多段プレスによる段数を多くしたもので、生産量はピンラミネーションに比較して多くできます |
<参考文献>
1.青木正光,"多層板用材料とマスラミコマーション"「プリント配線板」先端技術集成,p257,経営システム研究所(1987)