はじめに
今日、IoTの世界を実現する環境が整ってきて、各所でIoTの実践が発表されるようになってきている。反面、まだまだIoTに関して十分な理解が広まっていないのも現実である。簡単にIoTを表すと図1のようになり、すべての「もの」(Things)が勝手に喋りだすということになる。

ただし、従来から存在してきたオートメーションやM2M(Machine to Machine)との根本的な違いは、IoTの場合はすべての「もの」の状態や変化の情報がインターネットに繋がっているということである。
「もの」の状態や変化を把握するのがセンサである。電子部品としてのセンサの役割は「もの」の状態や変化を定量的に電気信号に変換することである。電気信号とは、電流、電圧、静電容量、抵抗などである。センサはIoTにとって必須の部品であるという所以である。
センサとは「見えないものを見る」ための道具である。産業革命以降、人間のもつ五感(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚)(図2)をセンサにより機械で置換できないかという研究開発がセンサの原点であり、開発が進み、さらに20世紀に入り、コンピュータが広く普及したことも相まって、センサは五感にとどまらず、自然現象までを対象とした広い分野での活用を目的として研究開発が進み順次実用化されつつある。

以下、IoTの実現に必要と思われる温度、光、磁気のセンサに関して述べる。
センサの定義
ものを物理量といい、すべての物理量は基本となる7つの単位の組み合わせからなっている。
7つの単位とは、長さ(m)、質量(kg)、時間(s)、電流(A)、温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)である。
物理量には示量性と示強性と2つの状態量に分類できる。示量性とは「系の大きさ、体積、質量に比例すること」であり、簡単にいうと「あるものを二つに分けたときに変化する量のこと」であり、体積や質量などが該当する。
いっぽう、示強性とは「系の一点における強さを表す物理量のこと」であり、簡単にいうと「あるものを二つに分けたときに変化しない量のこと」であり、温度や圧力などエネルギーに相当する物理量が該当する(図3)。

センサは物理量の変化を検知し有用な情報に変化するデバイスである。示量性の変化は、直接的に変化量を知ることができる場合があるが、示強性の変化を検知するためには被測定対象物から得られた情報を読み替えて必要な情報にする必要がある。すなわち間接測定となる。
一例を示すと、示量性では、数量などはカウンタで出た数値がそのまま使用できるが、示強性である車の速度などは、いったん車の車輪の回転数を電圧あるいは電流に置き換えて取得し、さらにそこから計算することで速度を得ることができる。
センサは「「もの」の状態や変化」を入力信号として、出力信号を「電気信号」として変換する部品である(図4)。

今日科学技術の進歩に伴い、測定したい変化の種類は日々刻刻、増え続けている。そのため、センサはカスタム性が強い多品種の電子部品である。
また、一口にセンサといっても、各人ごとに意味するところが異なっている。すなわち、変化を検知し電気信号に変換する部分を指す場合。この部分はセンサ素子あるいはセンサエレメントなどと呼ばれている。
次に変換された電気信号を増幅し、アナログの電気信号をデジタル変換する機能部品までの範囲を意味する場合。次に電気信号を外部に伝える機能までを含んでいるセンサデバイスの場合。さらにはセンサネットワークやIoTのような大掛かりなセンサシステムをも含んだものも、広い意味でセンサと呼ばれることがある(図5)。

したがって、センサに関して話をするときは、センサの定義をしておかないと混乱をきたす恐れがある。ここではセンサエレメントをセンサということにする。
センサの分類
センサの種類は多数あり、種別方法もたくさんある。また現在もセンサの種類は増え続けている。これはIoT普及により自動化が進むこと、安全問題や環境問題の解決のためなど日々科学技術の進歩があり、それに伴い新規開発のセンサが必要になるためである。
以下に、検出媒体別に分類したセンサ体系図を図6に示す。

主要センサの検出原理
1. 温度センサ
各部各所の温度検知の必要性は古くから存在しており、多種多様な温度測定方法が開発されてきている(図7)。

現在でもさらに新しい検出方法が生み出されている。理由の一つには、被測定物の温度の範囲が絶対零度(0K)から数千℃まで広いということがある。および測定環境条件が広範囲にわたり、おのおのの条件に合わせることが必要になっている。
また他のセンサに共通して言えることだが、測定精度および観応時間向上の課題がある。さらには測定方法の簡易化の要求もある。
測定方法には直接測定と間接測定がある。直接測定は被測定物にセンサを直接接触させてセンサの変化を読み取るものであり、間接測定は被測定物から発せられるエネルギーをセンサで受信し、信号に変換するものである。
(1) サーミスタ
サーミスタは温度の変化に対応して大きく抵抗値が変化する抵抗体であり、利用しやすいため多くの電子機器に利用されている。
温度がある一定の温度を超え上昇すると抵抗値が上昇するサーミスタをPTC(positive temperature coefficient)、抵抗値が逆に下がるものをNTC(negative temperature coefficient)という(図8)。これらは半導体セラミックスとも呼ばれることもある。

PTCはチタン酸バリウムを主としたセラミック材料を用いているものと、ポリエチレンなどの結晶ポリマを用いているものがある。PTCは形状から主にチップ、リード、ケースの3種類に分類される。温度特性が急変する点をキュリー温度と呼びこの温度を超えると抵抗値が急増する。温度制御機能があるためサーモスタットなど、電子機器の温度上昇を防ぐために用いられている。PTCは逆に電気を通すと発熱するため、ヒータにも利用されている。
NTCはMn、Co、Ni、Feの酸化物を主成分とし高温になるに従い、抵抗値が減少する。NTCサーミスタの形状はチップ、ガラスビード、ガラスダイオード、樹脂ビード、ディスクリートの5種類に分類される。
動作温度は−50℃から1,000℃まで広く、用途は広く使用されている。測定温度範囲で回路の動作で温度ずれを防ぐ「温度補償」、電子体温計などの「計測用」、エアコンやヒータなどの「温度制御」、冷蔵庫の「温度検知」など、通信機器・家電・自動車・事務機器・産業機器などの幅広い分野に使用されている。
上記のようにNTC、PTCの形状は種々あるが、特に表面実装用のチップタイプは小型であり、電子機器の基板に直接実装できるため、広く使用されている。
(2) 熱電対
熱電対は別名サーモカップルと呼ばれることがある。2種の異なる金属A、Bを接合し回路を形成し、両端の結合点(基準接点、測定接点)に温度差を生じるとゼーペック効果により、回路に熱起電力を発生する(図9)。

熱電対はこの回路の片方の接点の電位差を電圧計で測定することで、温度を検出する温度計である。2種の金属の組み合わせを変えることで、測定可能な温度範囲を幅広くすることが可能なため、各産業界で広く使用されてきている。特性のばらつきが小さく、耐熱性や耐食性が高いため、高音域やガスの雰囲気中での使用に耐えることが可能である。
熱電対の起電力特性については3つの法則がある。
①均質回路の法則
金属線が均質であれば局部的に加熱をしても電流が流れないというもので、熱電対の両端が均質であれば途中の温度分布に熱起電力は影響されない
②中間金属の法則
回路中に異なった金属が入っても、その両端の温度が等しいときは影響は生じないというもので、このため熱電対温度センサに異種金属である端子台やコネクタが使用できる
③中間温度の法則
回路中の中間温度が既知である場合、測定接点、中間温度、基準接点それぞれの温度差から得た起電力の和と全体の起電力は等しい、というもので、熱電対の温度測定に必要な冷接点補償回路はこの原理に基づいて設計される
実際の測定に際しては、基準接点に0℃の氷を入れた水を用いるか、あるいは温度補償回路の入った電圧計を用いる(図10)。

熱電対は仕様がJISC1602により規定されている。また使用する金属により測定範囲が異なるが、その一例を表1に示す。

(3) 赤外線センサ
赤外線センサは、赤外線を受光し電気信号に変換するセンサである。人間の可視光領域外なので、ヒトの目に見えない物を見ることができる。また対象物の温度を遠くから非接触で瞬時に測定できるなどの特徴をもつ。大別して、熱型と量子型とがある(図7)。
熱型には簡易的に広く使用されているものに、焦電方素子がある。原理はピエゾセラミックス(圧電素子)が熱源から発せられる赤外線を受光すると素子の温度が上昇し、電気的性質が変化することを利用したものである。量子型と比較すると簡便ではあるが、解像度、感応速度などは量子型のほうが勝っている。
いっぽう、量子型は可視光線用の受光素子(CCD、CMOSなど)と原理的に同様であり、光子が半導体を構成するPN結合部分に入ってきたときに生じる電子の動きを検出するものである。
2. 光センサ
電磁波の中で電波の種類を表すのには周波数を用いるのが普通であるが、同じ電磁波でも光の場合は一般的に波長で表すことが多い。電波は電波法で周波数の範囲が規定されており、ミリ波と呼ばれる波長が1mmより長い電磁波が電波である。周波数でいうと3THz以下の電磁波である(図11)。

いっぽう、それより波長の短いのが光であり、境界線は赤外線といわれるところからである。光センサを分類すると図12のようになる。

光センサの原理は、光によって引き起こされる電気現象の光起電力効果を利用し、光量に比例した逆電流が流れる性質を利用したものである。特徴としては光量と出力の直線性が良好、応答性が速い、波長400〜900nmの広帯域で検出可能、温度による変動が小さい、振動衝撃に強い、小型軽量であるなど多々ある。
(1) 光電効果型
真空中に置いた金属片に光をあてて陽極に高電圧を加えると、光のエネルギーが金属の仕事関数を超えていれば光電子が放出され電流が流れる(図13)。

ここで仕事関数とは物質表面において、表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことである。この時、表面上の空間は真空であるとする。この効果はアインシュタインが光量子を見出した実験としてよく知られている。
(2) フォトダイオード
光起電型の代表的なセンサの一つである。現在光学系のセンサに一番多く採用されているのがフォトダイオードを利用したセンサの一つであるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、またはCCD(Charge Coupled Device)である。
フォトダイオードの構造は図14に示すようにpn結合の半導体である。

接合部には電子エネルギーのスロープがあり、これが内部電位差である。ここに十分なエネルギーをもった光量子(太陽光)が入射すると電子を励起して、電子とホール(正孔)のペアを生成する。内部電位差があるため、電子はn層へ、ホールはp層へ移動する。これにより電流が流れることになる。これが原理である。
この原理を利用したCCDやCMOSはイメージセンサと呼ばれ、フォトダイオードを敷き詰めた構造となっている。光を受け発生した電流の処理方法の違いにより、分類される。図15と図16にCCDとCMOSの構造図を示す。


図より分かるように、CCDはフォトダイオードより出た電荷をバケツリレー方式で順番に出力回路まで運び、一つのアンプで増幅して電圧信号に変換される。
いっぽう、CMOSはフォトダイオードごとにアンプを備えており増幅を行う。近年は半導体製造技術の進歩によりCMOSを品質良く製造できるようになったため、幅広く使用されている。
3. 磁気センサ
磁気センサは機器の内側で使用されることがほとんどなので、目につくことはないが、IoT社会の実現には重要なセンサの一つとなる。磁気センサはその名の通り磁気を感知するセンサである。
磁気を利用してセンサにする方法は、直接測定対象物に触れずに済むため、各所で有効利用されている。使用方法や、磁気を感知する方法の違いにより多くの方法が考案されており、温度センサに匹敵するほどの種類がある。磁気の強さの分布とおおよその磁気センサの検知範囲を図17に示す。

また磁気センサの分類を図18に示す。

以下、磁気センサのいくつかについて述べる。
(1) 磁気抵抗効果
トムソン氏が発見した物質の性質で、ある特定の物質では磁気が印加されると抵抗値が変化する性質。この材料を用いて作ったセンサ素子を磁気抵抗素子(Magnetic resistive:MR素子)という。
磁気抵抗素子のセンサとして使われる材料には、強磁性体薄膜を用いたものと、半導体薄膜を用いたものがあり、特性が大きく異なっている。また、同じ強磁性体の薄膜を用いたMR素子であっても、薄膜構造などが異なるAMR(Anisotropic-Magneto-Resistive : 異方向性磁気抵抗)素子やGMR(Giant Magneto Resistive : 巨大磁気抵抗)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistance : トンネル磁気抵抗)素子などがあり、特性が大きく異なっている。特にSMR素子は他のMR素子と磁束の感知方向が異なっているため、実際に使用するときは、十分にセンサの特性を確認しておくことが必要である。
AMRとは外部磁場によって電気抵抗が変化する現象である。特定の方向からの磁界の強さに応じて、抵抗値が変化する性質を持つ。また、磁場強度が大きいほど、磁場の変化による抵抗の変化が大きくなる。
GMRは薄膜MR素子を特定方向へ積層したものであり、AMRに比べて非常に大きな磁気抵抗効果をもつ。巨大磁気抵抗効果とは普通の金属の磁気抵抗効果(物質の電気抵抗率が磁場により変化する現象)は数%だが、1nm程度の強磁性薄膜(F層)と非強磁性薄膜(NF層)を重ねた多層膜には数十%以上の磁気抵抗比を示すものがある。このような現象を巨大磁気抵抗効果と呼ぶ。
TMRは磁気トンネル接合(MTJ)素子において、磁場の印加でトンネル電流が流れて電気抵抗が変化する現象である。MTJのTMR素子は、一般的に酸化アルミニウム(Al2O3)や酸化マグネシウム(MgO)で形成した絶縁体の薄膜層を、2つの強磁性体層で挟み込んだ構造であり、GMR素子と非常に似た積層構造をもっている。低温でのTMR効果は1975年に発見されたが、応用が困難として当時はほとんど注目されなかった。しかし1995年、室温・低磁界で20%近い磁気抵抗変化(当時の最高値)を実現し、TMRは一躍、脚光を浴びることになった。
(2) ホール素子
半導体薄膜などに電流を流し、電流に垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が現れる現象をホール効果という。ホール効果によって磁束密度や向きに応じた電圧が出力される。このホール効果を用いて磁場を検出する素子のことを「ホール素子」という。
ホール素子とはホール効果を利用した磁電変換素子であり、電流が一定であれば印加磁場に応じた起電力を得られる。ホール素子は検出磁場強度に対しリニアな出力を示すので使い勝手が良く安価な磁気センサである。また磁束密度の変化がない静磁場であっても、磁場の有無を検出することができるため、磁石との組み合わせで使う非接触スイッチや、角度センサから電流センサまで、広い用途で使われている。最近は、ホール素子を用いた地磁気センサも実用化され、スマートフォンなどに広く使われるようになってきた。
(3) 磁気インピーダンス素子
1993年に発見されたアモルファス合金ワイヤの磁気インピーダンス効果を応用した素子である。磁気インピーダンス素子(MI : Magneto-Impedance element)はホール素子に比べて感度が高いことから、地磁気センサ(電子コンパス)として開発された。近年では心臓や脳などが発する生体磁気の検出など、用途が広がりつつある。
センサからの出力信号
これまでに述べてきたセンサは、センサの原理とそれらの使用例である。通常センサの出力信号はそのままでは利用することができない。利用できるように変換し、かつ変換された信号を目的に合う形に変換して初めてセンサの目的を達することになる。そのために信号変換デバイスやアクチュエータなどの周辺機器が必要となる。
センサが本来の目的通りに活用されるために信号変換がある。通常センサ出力は微弱なアナログ信号であり、微弱信号なアナログ信号の出力を高め、次にプロセッサで扱うためには、デジタル信号に変換する必要がある。アナログ信号には通常雑音(ノイズ)があるため、ノイズ除去のため適切なフィルタを挿入する必要がある。また出力された信号はそのままでは役に立たないため、出力デバイスで表示するかアクチュエータで機械的動きに変えるなどの周辺機器が必用となる(図19の「センサと周辺機器」参照)。

まとめ
上記に述べたセンサは広いセンサの世界のごく一部である。センサの課題は、IoT機器の感覚器官をつかさどるためにその種類が多いことと、一種類あたりの数量が少ないということである。したがってこれまでの電子部品が歩んできたような大量生産による恩恵を受けにくいということがある。
今後、IoTに加えて自動運転車の普及に向けて、よりいっそうセンサの重要性が高まるのは自明の理である。その要求にこたえることができるようなセンサの登場を願ってこの項を閉じることにする。
< 参考文献 >
⃝JEITA、2018年までの電子部品技術ロードマップ、
2009年
⃝JEITA、2020年までの電子部品技術ロードマップ、JEITA、
2011年
⃝AndTech、「IoT時代のセンサ技術の仕組みと種類・課題、産業界別 用途例、周辺機器・材料動向、将来展望」、
2018年