プリント基板(PCB)用語集

ブラシレスDCモータとは

1. ブラシレスDCモータ

1.1 ブラシレスDCモータとは?

ブラシレスDCモータは、直流電源を使用して回転運動を生み出す電動機の一種である。その名が示す通り、従来のDCモータで使用されていたブラシと整流子を排除し、電子的な制御方式を採用している。

• DCモータの基本

DCモータの基本原理は、磁石のN極とS極の磁力と、電流によって生じる磁界を利用して回転子軸を回転させることにある。DCモータは、直流電源を用いて軸を回転させるモータの総称であり、それらはさらにブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータに分類できる。

DCモータが回転を続けるためには、回転子が軸が回転方向に進むたびに順次電流を流すコイルを切り変えて連続的に軸を回転させる仕組みが必要となる。従来のブラシ付きDCモータでは、この切り替えを機械的に行っていたが、ブラシレスDCモータでは電子回路を用いて制御を行う。

• ブラシ付きDCモータとの違い

ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの最大の違いは、電流の切り替え方式にある。ブラシ付きモータでは、整流子とブラシを使用して機械的に電流の向きを切り替える。一方、ブラシレスDCモータでは、回転子の磁極位置を検出し、電子回路によって電流を流すコイルを切り替える。

この違いにより、ブラシレスDCモータはいくつかの優位性を持つ。まず、整流子とブラシの接触がないため、摩擦による部品の劣化が少なく、長寿命である。また、ブラシからの電気ノイズや騒音が発生しないため、静音性に優れている。

また、ブラシレスDCモータは高速回転が可能であり、追従性や応答性も優れている。ただし、駆動には専用の制御回路が必要となるため、システム全体のコストは高くなる傾向がある。

 

1.2 ブラシレスDCモータの構造と仕組み

ブラシレスDCモータの構造は、従来のブラシ付きDCモータとは大きく異なる。

• ステータとロータの構成

ブラシレスDCモータは、主にステータ(固定子)とロータ(回転子)から構成される。ステータは固定されたコイルを持ち、ロータは永久磁石で構成されている。

ステータには複数のコイルが配置されており、これらのコイルに順番に電流を流すことで回転磁界を生成する。ロータの永久磁石はこの回転磁界に引き寄せられ、あるいは反発することで回転する。

ブラシレスDCモータの構造は、アウターロータ方式とインナーロータ方式の2種類に大別される。アウターロータ方式は、内側にコイル、外側に永久磁石を配置し、外側の永久磁石を回転させる。この方式は回転する力を発生しやすい特徴がある。一方、インナーロータ方式は、内側に永久磁石、外側にコイルを配置し、内側の永久磁石が回転する。この方式は応答性が良く、きめ細かな制御が可能である。

• センサの有無による違い

ブラシレスDCモータの制御方式には、回転子の磁極を検知するためのセンサを使用するものと使用しないものがある。センサを使用する方式では、一般的にホールセンサなどの磁気センサが用いられる。

ホールセンサは、ホール効果と呼ばれる現象を利用して磁界の強さを判別する。これにより、永久磁石の位置(N極かS極か)を検知し、適切なタイミングで電流を流すコイルを切り替えることができる。

一方、センサレス方式では、モータの回転によって生じる逆起電力を検出することでロータの位置を推定する。センサレス方式はコストを抑えられる利点があるが、低速域での制御が難しく、また起動時に回転軸にかかる負荷により軸が拘束されていると始動ができないという課題がある。

• 電磁誘導と回転の関係

ブラシレスDCモータの動作原理は、電磁誘導の法則に基づく。ステータのコイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って磁界が発生するが、この磁界とロータの永久磁石との間に働く力によってロータが回転する。

回転を継続させるためには、ロータの位置に応じて適切なタイミングで電流を流すコイルを切り替える必要がある。これを電子的に制御することで、スムーズな回転が実現する。この制御には、マイコンなどを用いて論理回路を構築しインバータ回路をドライブする。インバータ回路は、直流電源を交流に変換し、ステータのコイルに適切なタイミングで電圧を印加する。これにより、回転磁界が生成され、ロータが連続的に回転する。

 

1.3 ブラシレスDCモータのメリットとデメリット

ブラシレスDCモータには、従来のブラシ付きDCモータと比較して多くの利点がある一方で、いくつかの課題も存在する。

• 高効率・長寿命の理由

ブラシレスDCモータの最大の利点は、その高効率性と長寿命にある。これらの特性は、主にブラシと整流子を排除したことに起因する。

ブラシ付きDCモータでは、ブラシと整流子が常に接触した状態で回転するため、摩擦による損失が発生する。また、この摩擦により部品が徐々に劣化していく。一方、ブラシレスDCモータではこれらの部品が不要となるため、摩擦による損失が存在せず、効率が向上する。

さらに、ブラシと整流子の接触による摩耗がないため、モータの寿命が大幅に延びる。これにより、長期間の連続運転が可能となり、信頼性の高い機器への応用が可能となる。

また、ブラシレスDCモータは高速回転が可能である。ブラシ付きモータでは、ブラシと整流子の接触による制限があるが、ブラシレスモータではこの制限がないため、より高速な回転を実現できる。

• メンテナンス性の向上

ブラシレスDCモータは、メンテナンス性においても大きな利点を持つ。ブラシ付きDCモータでは、ブラシと整流子が消耗部品であるため、定期的な点検や交換が必要となる。一方、ブラシレスDCモータではこれらの部品が不要となるため、メンテナンスの頻度と費用を大幅に削減できる。

また、ブラシからの電気ノイズや騒音が発生しないため、静音性に優れている。これにより、騒音が問題となる環境や用途でも使用が可能となる。

• 制御の難しさ

ブラシレスDCモータの主なデメリットは、その制御の複雑さにある。ブラシ付きDCモータでは、速度制御を行わない場合、単純に電圧を印加するだけで回転させることができる。しかし、ブラシレスDCモータでは、ロータの位置を検出し、適切なタイミングでコイルに電流を流す必要がある。

この制御を行うためには、専用の駆動回路(ドライバ)が必要となる。ドライバには、ロータの位置を検出するセンサ(ホールセンサなど)や、電流を制御するためのマイコンなどが含まれる。これらの追加コンポーネントにより、システム全体のコストと複雑さが増加する。

さらに、センサレス方式を採用する場合、低速域での制御が難しくなるという課題がある。低速時には逆起電力が小さくなるため、ロータの位置推定が困難になるためである。

 

1.4 主要な用途と産業別の活用例

ブラシレスDCモータは、その高効率性、長寿命、静音性などの特徴から、多岐にわたる産業や用途で活用されている。主要な用途と産業別の具体的な活用例を見ていく。

• 産業用機械

産業用機械分野では、ブラシレスDCモータの高効率性と長寿命が大きな利点となる。特に、連続運転が求められる設備や、高精度な制御が必要な機器で多く使用されている。

具体的な例として、工作機械の主軸駆動や送り軸駆動が挙げられる。これらの用途では、高速回転と精密な位置制御が要求されるため、ブラシレスDCモータの特性が活かされる。また、産業用ロボットのアーム駆動にも使用され、高い追従性と応答性を実現している。

さらに、空調機器や冷凍・冷蔵設備のコンプレッサー駆動にも広く採用されている。これらの用途では、長時間の連続運転が求められるため、メンテナンスフリーで長寿命なブラシレスDCモータが適している。

• 家電・電動工具

家電製品や電動工具の分野でも、ブラシレスDCモータの使用が増加している。これらの製品では、高効率性と静音性が特に重要視される。

家電製品の例としては、エアコンの室外機ファン、洗濯機のドラム駆動、掃除機のモーターなどが挙げられる。特にエアコンや洗濯機では、省エネ性能の向上が求められており、高効率なブラシレスDCモータの採用が進んでいる。

電動工具では、ドリルやグラインダー、電動のこぎりなどにブラシレスDCモータが使用されている。これらの用途では、高出力と長時間使用が求められるため、ブラシレスDCモータの特性が活かされる。また、メンテナンスフリーであることも、プロ用途では大きな利点となっている。

• ドローン・ロボット

ドローンやロボットの分野では、ブラシレスDCモータの小型・軽量化と高出力性が重要な役割を果たしている。

ドローンでは、プロペラの駆動にブラシレスDCモータが広く使用されている。ドローンの飛行性能は、モータの性能に大きく依存するため、高効率で精密な制御が可能なブラシレスDCモータが適している。また、軽量であることも飛行時間の延長につながる重要な要素となっている。

ロボット分野では、人型ロボットの関節駆動や、自律移動ロボットの車輪駆動などにブラシレスDCモータが使用されている。これらの用途では、高いトルクと精密な位置制御が要求されるため、ブラシレスDCモータの特性が活かされる。また、静音性も重要な要素となっている。

 

1.5 今後の技術発展とトレンド

• 高精度制御技術の進展

ブラシレスDCモータの制御技術は、より高精度かつ効率的な方向に進化している。特に、センサレス制御技術の向上が注目されている。従来のセンサレス制御では低速域での制御が課題であったが、新しいアルゴリズムの開発により、この問題の解決が進んでいる。

また、人工知能(AI)や機械学習技術を活用した制御方式の研究も進んでいる。これにより、モータの特性変化や負荷変動に対してより柔軟に対応できる制御システムの実現が期待されている。

モータの状態監視技術も進化している。センサデータやモータの電流・電圧情報を分析することで、モータの劣化状態を予測し、最適なメンテナンスタイミングを提案するシステムの開発が進んでいる。

• 磁石・材料技術の革新

ブラシレスDCモータの性能向上には、磁石や材料技術の革新が不可欠である。特に、希土類磁石の開発が重要な役割を果たしている。サマリウム・コバルト磁石やネオジム・鉄・ボロン系磁石などの強力な希土類磁石の使用により、モータの小型化と高出力化が実現されている。

また、モータの効率向上のために、より損失の少ない電磁鋼板の開発も進んでいる。これらの高性能材料の使用により、モータの効率が大幅に向上している。

環境負荷の低減を目指し、希少金属の使用量を削減した磁石の開発や、リサイクル可能な材料の研究も進められている。

• モータの小型化・高出力化

ブラシレスDCモータの小型化と高出力化は、さまざまな産業分野からのニーズに応えるため、継続的に進められている。特に、電気自動車やドローン、ロボットなどの分野では、軽量かつ高出力なモータが求められている。

最新の技術では、モータ直径が3mm、モータ長が8.4mmという超小型のブラシレスDCモータも開発されている。これらの小型モータは、医療機器や精密機器など、限られたスペースでの使用に適している。

同時に、高効率化も進んでおり、同じサイズでもより高い出力を得られるモータの開発が進んでいる。例えば、エアコンや給湯器などのファン駆動、大型空調設備のダンパー制御などで、高効率な小型ブラシレスDCモータの採用が増えている。

 

まとめ:

ブラシレスDCモータによる動力源の進化は生活環境の変化に応じて更に高性能な仕様が望まれる。同時に普及性を考えると如何に必要十分なモータを構成するかと言うことが重要になる。

高性能であらゆる保護機能を有し、如何なる制御も可能な制御回路との標準化されたブラシレスDCモータは付加価値は高いがコストもこれに比例する。つまりブラシレスDCモータが採用されるアプリケーション実機に対して、適切に設計されているモータであり評価されてることが最も重要であることは言うまでもない。


監修:株式会社ジャパンマグネット モーション事業部
   https://jmi-motion.com/
 

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