2023年7月26日(水)〜7月28日(金)、東京ビッグサイトにて「TECHNO-FRONTIER2023」が開催された。
メカトロニクスおよび、エレクトロニクスに関連する専門領域の最新技術と製品が展示されるアジア最大級の専門展示会である本展において、基板の窓口では出展企業17社を総力取材。
国内唯一のモータ技術を核としたモーションエンジニアリング・メカトロニクス制御、電源システム、EMC対策、熱対策を組み込んだアクチュエーション・パワーエレクトロニクスの要素技術および、スマート工場に向けたものづくりDX・カーボンニュートラルに関する生産技術が一堂に集結した本展を総括し、各社の最新製品や技術をお届けする。
■会期:2023年7月26日(水)〜7月28日(金)
■会場:東京ビッグサイト東展示棟
■主催:⼀般社団法⼈⽇本能率協会
■公式サイト:https://www.jma.or.jp/tf/
・取材企業
Mouser Japan GK(マウザー・エレクトロニクス)/日本ケミコン株式会社/スミダコーポレーション/株式会社日立ケーイーシステムズ/アナログ・デバイセズ株式会社/株式会社アルファー精工/有限会社創造デザイン/株式会社A/Vicor株式会社
・まとめ
TECHNO-FRONTIER2023主催 一般社団法人日本能率協会 森 敬士 氏
半導体を含む電子部品のオンライン販売を行うマウザー・エレクトロニクス。製品はすべて100%純正、1200製品ブランドからなる品ぞろえを強みとし、お客様のほしいものが同社一か所ですべて揃うよう尽力している。
また、日々の電子メールやウェブサイトで業界のトレンド情報の発信を行うなど、業界を牽引する存在である。
業界をリードする電子部品メーカー8社が集結
本展の同社ブースでは、業界をリードする電子部品メーカー8社が集合。
高速・高電圧コネクタや絶縁ソリューション、環境センサーボード、高性能マイコン・コンデンサなどの最新製品が一同に介し、ブースは常時来場者で賑わいを見せた。
日本ケミコン株式会社は、アルミ電解コンデンサ世界トップシェアの電子部品メーカー。
主力のアルミ電解コンデンサを初め、積層セラミックコンデンサ、セラミックバリスタ、電気二重層キャパシタ、カメラモジュールなどを取り扱う。
新製品開発においては、コンセプト主導型をテーマに取り組み、お客様の課題解決に向けて提案活動を推進している。
実装改善に貢献! 「スルーホールリフロー対応アルミ電解コンデンサ」
同社の「スルーホールリフロー対応アルミ電解コンデンサ」は、昨今の工程改善およびカーボンニュートラルへの対応によるリフロー化の加速に対応する製品として、リードタイプのアルミ電解コンデンサでありながらリフロー実装できる点に特徴を持つ。
オールリフロー化の実現のみならず、端子位置精度の向上による自動実装対応も可能とする。
詳細:https://www.chemi-con.co.jp/products/module/ecst250e222m20x1ma.php
スミダコーポレーションは、マグネティクス技術を応用したさまざまなコイル製品の開発・製造・販売を行うグローバル企業である。
車載関連事業をはじめ、産業機器・医療・コンシューマなど、さまざまなアプリケーションで同社の製品が使用されている。
同社の強みとして、要求に応じて設計/製造するカスタムデザインに非常に柔軟に対応できる体制を整えていることから、多くのユーザーから支持を得ている。
モーター周辺の構造簡素化によるコスト削減に貢献!「渦電流式ロータポジションセンサ」
同社の「渦電流式ロータポジションセンサ」は、さまざまな回転する製品の回転角を測定し、特に電気自動車などのモーターの回転角センサーに最適なソリューションである。
同社の渦電流式ロータポジションセンサは、非常に軽量で薄い形状を実現しており、重さにして約50グラム、薄さは8mm程度を実現。
回転角センサーとして、機能安全規格ISO26262を準拠し、ACIL-CまたはDに対応している。
すでに同社のロータポジションセンサを採用しているユーザーからは、センサーの取り付けが非常に容易となったことや、モーター周辺の構造がシンプルとなったことについて高い評価が寄せられている。
詳細:www.sumida.com/userfiles/NEWS_EVENTS/EVENT_SUMMARY/PSJ-2023/8_Rotor_Position_Sensor.pdf
株式会社日立ケーイーシステムズは、産業、流通、公共分野向けシステムインテグレーション、組込ソフトウェア開発、産業向け情報機器製品の提供を主力事業とするSier。
IT領域のみならず、OT領域のノウハウも持ちながら、PLCやセンサー、産業ネットワークと連携したIoTソリューションの提供を強みとする。
近年では、産業・流通分野のDXソリューションとして、全国45000面のディスプレイを運用するクラウド型デジタルサイネージサービス「MediaSapce」や、製造現場、フィールドサービスの現場の改善を促進する見える化ソリューション「WORKFRONT」の提供に注力している。
設備や作業状況をクイックに可視化!現場見える化ソリューション「WORKFRONT/CLOUD」
現場見える化ソリューション「WORKFRONT/CLOUD」は、製造現場やフィールド―サビスの現場のヒト、モノ設備からの情報を収集、クラウド上で見える化し、お客様の現場情報収集・集計の自動化、オペレーションの高速化・最適化を実現する。
現場情報収集基盤のエンジニアリングからIoTゲートウェイ端末・回線・クラウド基盤・ダッシュボード画面をワンストップで提供できるのみならず、同社のこれまでのユースケースを活用したクイックなサービス構築が可能な点を特徴とする。
アナログ・デバイセズ株式会社は、高性能アナログ半導体の設計・製造・販売を行う。
ADコンバータでは世界一のシェアを有しており、ポートフォリオとしてアナログ分野から高周波分野、そしてデジタル分野まで幅広く高性能な半導体製品を擁している。
アナログ絶縁ソリューション!固定ゲインとシングル・エンド出力を備えたiCoupler ®絶縁型アンプ「ADuM4195-1」
アナログ・デバイセズの強みである、トランスによるガルバニック絶縁を実現しているiCoupler®技術は、同社のデジタル・アイソレータ製品に広く採用されている。
本展にて出展を行った絶縁型アンプADuM4195-1は、iCoupler ®技術をベースに開発された製品であり、オフセット誤差とゲイン誤差が非常に小さいという特徴がある。
入出力範囲が広く(> 4.3 V IN-to-OUT)、入力インピーダンスが高い特長も持つ(> 1 GΩ)。
またUL1577に基づき、最大5 kV RMSまでガルバニック絶縁を提供することが認定されている他、沿面距離を増やしたワイド・ボディの小型8ピンSOICパッケージとなっている。
詳細:https://www.analog.com/jp/products/adum4195-1.html
金属加工を行う株式会社アルファー精工は、エッチングという技法を用いた、精密な形状への加工技術に強みを持つ。
また、電鋳やレーザー加工機も有し、精密加工を一社で行うことができる。
さまざまなセンサーメーカに対応した金属反射板「反射エンコーダ用非反射メッキ仕様の金属反射板」
「反射エンコーダ用非反射メッキ仕様の金属反射板」は、モーターセンサー用の反射型エンコーダ用金属スリット板の製品。
さまざまなセンサーメーカに対応した製品の量産製造の実績を持ち、産業用途・車載用途など厳しい環境下でも反射率の問題なく使用できる点は、他社では実現できない同社の強みである。
また、本展で初公開となった、ハブ自体にレーザ加工を施してスリットを作成する技術は、従来の部品点数や組み立て工数を減らせるのみならず、積み上げ公差の減少にもつながる革新的な技術である。
ソフトウェアの開発を行う有限会社創造デザインは、製造現場における作業手順の動画マニュアルを手軽に作成することができるソフトウェアや、動画を活用した作業分析をユーザーが手軽に行えるソフトウェアを手がける。
カメラ複数台を同時撮影する仕組みを軸にした「多画面動画マニュアル」は、パワーポイント感覚で簡単に作成することができるユーザビリティに強みを持つ。さらに、最大16人分の動画の比較分析による、作業の違いの可視化も簡単に行うことができる。
製造現場の技能伝承をサポートし、動画マニュアル作成時間短縮に貢献!「多画面動画マニュアル作成ソフト EduMultiCapture・EduNote」
多画面動画マニュアル作成ソフト「EduMultiCapture・EduNote」は、製造現場での動画マニュアル作成を動画に不慣れな方でも簡単に作成できるソフト。
カメラ複数台の多視点撮影により、従来撮り逃しが多かった現場作業撮影における撮影回数の削減に貢献できる。
また、従来最も手間がかかっていた動画編集においても、パワーポイント感覚で多画面動画マニュアルが簡単に作成できるため、作業者を選ばず取り組みやすい。
導入実績として、動画マニュアル作成時間を1/10に短縮でき、技術者育成時間は1/3に短縮した事例を有する。
株式会社Aは、商品・事業開発プラットフォーム運営、マネジメントや商品開発コンサルティングを行う。
同社のオープイノベーションプラットフォーム「Weamke」は、3万人の社外プロとの共創活動により、社内だけでは発見できない事業企画案の創出や、新商品開発、素材/技術の出口探索などに活用することができる。
業界業務の経験豊富な「その道のプロ」からニーズを収集し、短期間で240件を超える事業アイデア創出することが可能となる。
さらに、大手企業120社以上での豊富なノウハウをもとに、ハンズオンでの支援も行う。
1日30分の隙間時間で、アイデア240案を創出!国内最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「Wemake」
本展では、同社が運営を行うオープンイノベーションプラットフォーム「Wemake」の仕組みや事業開発におけるノウハウ、大手企業120社以上での活用事例などの紹介を行った。 さらに同社では、社内公募制度の支援など新サービスの公開も予定している。
https://www.youtube.com/watch?v=r6ca3H7VH88
米国に本社を構える電源モジュールの専業メーカーであるVicor株式会社は、DC/DC、AC/DCコンバータ回路をシングルパッケージ化した電源モジュール製品の製造・販売を行う。
同社の電源の特徴として、小型・高効率・大電力が挙げられ、多岐にわたる産業分野(ハイパフォーマンスコンピューティング、オートモーティブ、産業機器、ロボティクス、鉄道、通信ネットワーク、航空防衛アプリケーションなど)で導入されている。
小型・高効率・高電力密度の電源モジュール製品
同社は回路技術・制御技術・パッケージング技術において170以上の特許を保有し、 「メガヘルツスイッチングの高性能な独自電源モジュール製品」の開発を行う。
本展にて出展した「絶縁型・DC-DCコンバータ」の「BCMシリーズ」もそのひとつであり、入出力を1:nで変換できる「電圧変換比固定のコンバータ」として小型で大電力出力ができ、双方向での電力変換も可能とする電源モジュールである。
同シリーズは、サイズや入出力バリエーションが異なるさまざまなモデルを展開し、異なる変換比率の組み合わせも自在。
さらに、「複数個の並列運転」が可能なモデルにより大きな電力の確保や、出力の直列接続も可能なモデルも揃え、用途や要望に応じた最適なソリューションを提供することができる。
詳細:https://www.vicorpower.com/ja-jp/
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行も追い風となり、非常に多くの来場者が訪れ活気にあふれた本展。
主催者企画では、「スマート工場から生み出されたプロダクトが人類の生活をより豊かで快適にする」という本展のビジョンを体現すべく、人と技術が共存する次世代スマート工場をテーマにした展示・講演が行われた。
▼本展の見どころの詳細はこちら
https://jpcb.jp/pickup/?m=detail&pkid=307
主催者セミナーにおいて、特に多くの反響が寄せられた内容として、主催の一般社団法人日本能率協会 森敬士氏は、名古屋大学 未来材料・システム研究所教授 山本 真義氏、アパテックモーターズ 代表取締役社長 孫 峰氏、KGモーターズ CEO 楠 一成氏によるトークセッション「パーソナルEVの可能性」を挙げた。
マイクロEV、軽EV、超小型EVなどコンパクトで手ごろな電動車を「パーソナルEV」と位置づけた際の価格や性能のあり方、普及への課題や展望、ひいては社会変革への可能性などについて意見が交わされた本セミナーについて、森氏は「議論が白熱し、時間が足りなかったという声も聞いている。それくらい人気を集めるセッションができたと自負している」と反響を語った。
本展開催前の基板の窓口の取材に対し、本展が目指す未来について、「パーパスに共感する出展社を集うことで、来場者・出展社・主催者の関係はより一層強固なものになり、TECHNO-FRONTIRERが人々の豊かな生活に役立っていけたら」と語った森氏。
スマートでクリーンなものづくりの実現を目指す本展は、来場者・出展社・主催者が一体となり、パーパスの具現化を図りながら、技術の『シン』化で未来を創っていく。