2023年5月24日(水)〜5月26日(金)、パシフィコ横浜にて「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」が開催されました。
世界へ向け、自動車の最新技術・製品を発信する国内最大の技術展である本展において、基板の窓口では、主催の公益社団法人自動車技術会および、出展企業18社を総力取材。
脱炭素化やサステナビリティが世界的なトレンドとなる中、大きな変革が求められている自動車業界の動向や、各社の最新技術をお届けします。
会期:2023年5月24日(水)〜5月26日(金)
会場:パシフィコ横浜
主催:公益社団法人自動車技術会
公式サイト:https://www.manufacturing-world.jp/nagoya/ja-jp.html
・取材動画(随時更新)
株式会社村田製作所/株式会社東京測器研究所/パルステック工業株式会社/株式会社司測研/沖エンジニアリング株式会社/株式会社三社電機製作所/出光興産株式会社/株式会社鷺宮製作所/スミダコーポレーション株式会社/株式会社エー・アンド・デイ/株式会社富士テクニカルリサーチ/シナノケンシ株式会社/イグス株式会社/ユニチカ株式会社
・まとめ
人とくるまのテクノロジー展2023・2024
公益社団法人自動車技術会 展示会企画会議 幹事 山本一哉氏
https://www.youtube.com/watch?v=hVEbEAJXyXA
株式会社村田製作所は、セラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行う総合電子部品メーカーです。
主力の積層セラミックコンデンサをはじめ、インダクタやフィルタ、センサといった部品から、それらを組み合わせたデバイスやモジュールにいたるまで、幅広い製品群で高いシェアを獲得しています。
また、グローバルな事業展開を行う同社は、高品質の製品と充実したサービスを世界中に提供できるネットワークや、それをもとにお客さまのニーズを先取りできる点を大きな強みとしています。
《小型/高精度な温度センサで車載バッテリーの熱暴走対策に貢献!「温度センサ サーミスタ」》
周囲環境の温度変化や、印加された電圧・電流による発熱での温度変化に応じて、抵抗値が変化します。
温度センサ、回路保護、温度補償など感温素子として、さらには発熱体としてさまざまな用途で活躍します。
スマートフォンやウェアラブル端末をはじめ、各種電子機器や自動車/車載機器などに向けた特性や形状をラインアップしています。
詳細:https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/search/selectionguide
ひずみ・応力測定の総合メーカーである株式会社東京測器研究所。
長さの変化を100万分の1のオーダーで測る「ひずみゲージ」や、またその測定技術を65余年に渡り追求し、インフラの維持管理、自動車・航空機・電子機器など、さまざまな分野から寄せられる材料強度・安全性・耐久性の把握に貢献してきました。
同社は、車両開発に有効な応力・荷重・トルク・加速度・変位・圧力センサやそれらのレコーダシステムなどで高品質なデータ収録システムを提供します。
《測定対象にひずみゲージを施工せずワンタッチで測定可能!「摩擦型トルクセンサシステム FGDH-3A 操舵力角計 HLA-50B 走行時ハブボルト軸力計測システム」》
同社は本展示会において、「ドライブシャフトのトルク測定」として、摩擦型トルクセンサシステムFGDH「操舵力角計」などを紹介しました。
いずれの製品も既存のドライブシャフトやステアリングを加工することなく設置・測定、さらに再利用が可能なセンサです。 車両開発現場における性能評価、経済性の向上に貢献します。
さらに、参考出品として、走行時ハブボルト軸力計測システムを発表しました。ハブの軸力ボルト化により、走行時の軸力変動要因の究明が可能です。
詳細:https://tml.jp/product/automotive_ins/driveshaft.html
https://tml.jp/product/automotive_ins/steering.html
パルステック工業株式会社は、創業当初より「研究開発型モノづくり企業」を志向し、数々の計測・検査装置を開発・提供しています。
光学設計を始めメカ、電気、ソフトウェア技術者が在籍し、お客様からの要望に仕様検討から設計、製造、販売、メンテナンスまで一貫でのソリューションを提供できる点に強みを持っています。
《非接触非破壊で残留応力、硬さムラを把握することで工程改善や課題解決につながる!「ポータブル型X線残留応力測定装置(μ-X360s) 非接触硬さムラスキャナ(muraR)」》
同社の「X線残留応力測定装置」は、他社の従来装置にはないポータブルタイプであるため、測定ワークを測定装置へ持って行くのではなく、測定対象物へ測定装置を持出し測定できることで従来装置では測定できなかったワークに対しても測定が可能です。
さらに、硬さムラスキャナは非接触で硬さのムラをスキャンできます。一般的には圧痕を付けポイントでの評価になるところ、スキャンすることで面の分布を把握することもできます。
詳細:https://www.pulstec.co.jp/product/x-ray/
株式会社司測研は、流量計、圧力計、微粒子計、ガス分析計、スモークメータを中心とした計測器メーカーです。各種計測・制御を組み合わせた特注の計測システムにも対応しています。
《標高4500mまでの吸気圧力を模擬!流量範囲13500L/minまでカバー!「高地エンジン吸気模擬装置 HES-225」》
「高地エンジン吸気模擬装置 HES-225」は、エンジンの吸入空気圧力を減圧し高地におけるエンジン出力低下を模擬します。
モード走行に追従できる調圧機構を備えたコンパクトな本体は、移動や設置も簡単であり、研究開発における高地試験のコストと時間の節約に貢献します。
詳細:https://www.sokken.co.jp/special/201805/entry555.html
沖エンジニアリング株式会社は、お客様の各種電子機器、部品、材料などに対して独立した第三者機関として試験・評価・解析を行う受託会社です。
今年創立50周年を迎え、経験と実績に基づく確かな技術に加え、国内最高レベルの試験・評価・解析機器を保有しお客様の求める高品質を実現します。
また、電子部品の情報調査、各種認定規格に基づく計測器の校正など環境分析や環境システム構築といった業務を含め、社会の“安全・安心”と“環境保全”に貢献しています。
《小さな試験片に加工していた部品や機器も加工せず試験試験可能!「大型製品の高濃度オゾン試験サービス」》
同社のおすすめサービスは、「大型製品の高濃度オゾン試験サービス」です。
本サービスでは、大型の試験槽を使用して高濃度のオゾン試験を行い、空気中に存在し、ゴムや樹脂を劣化させるオゾンに対する耐性を評価することができます。そのため、屋外で使用する製品を作っている方、特に自動車業界の方におすすめです。
最近では、自動車の電動化やCASEの進展により、LiDARセンサーやカメラを搭載した車載機器が外部に露出することが多くなりました。そのため、これらの機器にはオゾンなどのさまざまな環境に対する耐性評価が求められています。また、部品点数や製造コスト、重量削減のために、いくつかの部品が一体化した「大型製品」の試験ニーズも増えています。
同社の「大型製品の高濃度オゾン試験サービス」は、非常に大きな試験槽でオゾン試験を行うことができる特徴があります。従来は小さな試験片に加工していた部品や機器を、加工せずに試験することが可能です。加工にはコストがかかる上に、材質や構造の変化による結果の違いも懸念されます。
さらに、高加速での劣化試験にも対応しています。当社が導入したオゾン試験槽は、受託試験業界では最大の大型試験槽です。たとえば自家用車のタイヤなら、加工せずに試験することが可能です。この写真は、弊社でタイヤ丸ごと試験を行ったもので、劣化を促進するために通常よりも高濃度のオゾンを使用しています。試験前後を比較すると、表面にクラックやひび割れが生じていることがわかります。また、構造によって劣化の状況が異なることもわかります。
同社では試験後の構造や組成の変化といった評価解析も、ワンストップでご提供することが可能です。
詳細:https://www.oeg.co.jp/Rel/ozone.html
https://www.youtube.com/watch?v=bZnWv6lqmfg
今期90期を迎える三社電機製作所は、パワー半導体と電源機器の製作・販売を行っています。
交流⇔直流へ自在に電気のカタチをかえる変換技術と、プリント基板、ケース、変圧器など内製率の高さを武器に、お客様のご要望や仕様に応じた設計・製作が可能です。
《直並列自在の30kWモジュール式で車載機器の試験・評価にスピーディに対応「モジュール式 回生型双方向直流電源:S・Loop」》
EV車に搭載する多岐にわたる機器の試験・評価には、高精度の双方向直流電源が必要となる中、モジュール型30kW回生型双方向直流電源装置を開発した同社は、車載機器の試験・評価のスピーディな対応を実現可能としました。
4直列(2000V)12並列(2160A)まで自在に直並列が可能であり、容量も最大360KWまで拡張することができます。
応答性についても自社のSiCを採用し、1msの高速応答を実現しました。
詳細:https://www.sansha.co.jp/products/evaluation/various-storage-battery.html
出光興産株式会社は、燃料油部門、資源部門、基礎化学部門、機能材料部門、再生エネルギーからなる事業の5つの事業部門で成り立っています。徹底的な顧客志向である姿勢に強みを持っています。
《出光のソリューションを駆使し、金属代替、他樹脂からのコストダウンに貢献!「シンジオタクチックポリスチレン(SPS)ザレック」》
同社が世界で唯一製造販売している、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)ザレックです。
1985年に世界初の合成に成功した同社は、さらに1997年世界で最初の工業化を達成し、純国産のポリマーとなりました。
ポリスチレンの特長を引き継ぎ、立体規則性(シンジオタクチック構造)を持たせた結晶性の高機能ポリスチレン素材である本製品は、軽量で耐熱性・耐加水分解性・誘電特性・耐薬品性に優れていることから、自動車・家電・日用品などさまざまな分野で採用されています。
詳細:https://www.idemitsu.com/jp/business/ipc/products/sps/index.html
株式会社鷺宮製作所は、冷凍・冷蔵・空調用自動制御関連機器および試験装置の製造販売を行っています。 試験機事業においては、50年以上の長きにわたり、高性能な試験装置を自動車メーカーや部品メーカーに提供しています。
《試作回数の低減・車両開発期間の短縮に貢献!ドライビングシミュレータ「DiM(Driver in Motion)」》
同社の「DiM(Driver in Motion)」は、車両モデルベース開発(MBD)の段階で、車両の挙動をドライバーがリアルタイムに体感できることから、試作回数の低減・車両開発期間の短縮に貢献できるドライビングシミュレーションツールです。
革新的なHexapodとTripodのコンビネーションとFloatingシステムにより、「DiM」プラットフォームのパフォーマンスを創出。ロングストロークタイプの「DiM250」では、「DiM150」より長時間の”加速度"を再現することができ、評価できるシチュエーションの幅が更に広がります。
同社では、モデルベース開発に紐づく評価ツールとして、車両開発の効率化を画期的に進めています。
詳細:https://www.saginomiya.co.jp/dynamic/jidousha/road/road03.html https://www.saginomiya.co.jp/dynamic/pdf.html
スミダコーポレーション株式会社、はインダクタ、トランス、L素子を用いたモジュールを手がけるコイル専業メーカーです。 幅広い製品ラインナップに加え、顧客の特別なニーズに応えるフルカスタム対応も可能できる点に強みを持っています。
《車載アプリケーションの大電流に対応したラインナップ「カスタムメタルコンポジットインダクタ、平角線インダクタ=CDPQ/DPQシリーズ」》
AEC-Q200対応のインダクタラインナップは、車載アプリケーションの大電流に対応したラインナップです。
同社のメタルコンポジットインダクタには、一般的とされる4㎜~17㎜のラインナップがあります。
本展に展示されたカスタムメタルコンポジットインダクタと平角線をインダクタにより、近年大電力、大電流化している車載アプリケーションに応えることができます。
詳細:https://www.sumida.com/news/index.php?categoryId=3&newsId=864
https://www.youtube.com/watch?v=tpB7w8eoYfk
株式会社エー・アンド・デイは、アナログとデジタルの変換技術をコアとして、DSP搭載計測・制御・シミュレーションシステム、各種試験機、電子天秤、ロードセル、血圧計、温度計、体重計などの製品を取り扱っています。
《交流重畳法に対応したバッテリエミュレータ「内部インピーダンス模擬装置」》
現在、バッテリの詳細な劣化状態については、専用の施設でバッテリを取り外し計測を行っています。
EVの価格の半分がバッテリ価格とされる中、車両でバッテリの状態を計測できるようになることで、車両の適正評価やバッテリのリサイクル性向上などが期待できます。
また、IC・BMSの評価や量産には劣化バッテリが必要よなりますが、バッテリを劣化させるには莫大な時間が必要となります。
そこで、本装置は任意の劣化状態を再現できるため、安全にかつ手軽に試験を行うことが可能となります。
詳細:https://www.aandd.co.jp/products/dsp-tech/#dsp-ptt-product
株式会社富士テクニカルリサーチは、ものづくり産業界の技術開発分野に対し先端技術を提供している提案型コンサルティング企業です。 CAE解析サービスや、計測サービス、ハードウェアの開発・販売やソフトウェアの開発・販売などお客様の困りごとに対し、最適なソリューションを提供するためにさまざまな事業を展開しています。
《大型対象物を高速かつ高精度に3Dスキャン!ポータブル3Dスキャナ「MetraSCAN3D」》
同社のポータブル3Dスキャナ『MetraSCAN』は、C-TrackとMetraSCANで1対となり、広範囲を高速・高精度に計測可能な製品です。ISO17025を取得した校正ラボで校正されているため、信頼性の高さを強みとしています。
また、従来3Dスキャナで計測が難しかった金属光沢や、黒い対象物に対して レーザーの調光をすることで、粉を吹きつけるなどの前処理を行わずに計測が可能です。
事例として、従来検査のために製品ごとに治具を設計し寸法の確認をしていたケースでは、半分程度治具を製作せず、3Dスキャナのみで検査が可能となった実績もあります。
詳細:https://ftr.co.jp/solution/quality-control/metrascan3d/
シナノケンシ株式会社は、ASPINAブランドのもと、「世界中の人々の希望と快適をカタチに」というミッションをかかg活動しています。
同社の強みである「小型」「軽量」「静音」を実現する高い技術力を活用し、湯器や扇風機など各種産業向けの高品質なモータやモジュール製品を提供し続けています。
《その力、想像以上。「薄型インホイールモータ:CAIW-200FA」》
ASPINAインホイールモータは、高効率・耐久性の高いブラシレスDCモータを採用した電動ホイールと専用ドライバを組み合わせ、バッテリ駆動に最適な「駆動ユニット」を提供しています。
ブレーキ内蔵で非通電でも安全に停止することができます。また、タイヤの変更が可能であることから、さまざまな搬送の動きに対応することができます。
さらに、インホールモータ構造のため駆動ユニットの省スペース化が可能となることで、設計の自由度向上に寄与します。
防塵防滴仕様IP44設計は、半屋外の幅広い用途・環境に適用することができ、ほこりや水しぶきに対して耐久性を持つことから、安全に使用することができます
詳細:https://www.plexmotion.com/products/series_CAIW/
ドイツに本社を構えるイグス株式会社は、自動車産業をはじめとする多くの産業へ、自社開発・製造の機能性プラスチック(エンプラ)を使用したさまざまなプラスチック製品を提供しています。
《プラスチックそのものが潤滑性を持つため潤滑剤不要!「独自開発エンプラ(固体潤滑)」》
同社独自開発のエンプラ(固体潤滑)は、固体潤滑であることから、プラスチックそのものが潤滑性を持っているため、グリースやオイルなどの潤滑剤が不要です。 固体潤滑で滑り性が良く耐摩耗性に優れ、よくある油を染み込ませた含侵とは全く違い、枯れることがない点が強みとなります。 さらに、油を使用しないため、ほこりや砂の吸着もなく、注油のメンテナンスも不要となります。
同社は近い将来の自動車における新たな機能において、独自材料による製品提案にあたり、お客様の部品点数削減や設計自由度向上など多くのベネフィットを提供できると考えています。
ユニチカ株式会社は、1889年に尼崎紡績として創立し、1969年のニチボーと日本レイヨンの合併により総合繊維会社の「ユニチカ」として新たに歩み始めました。
その後、繊維技術の応用で事業の多角化を推し進め、現在では機能素材メーカーとして高分子、機能資材、繊維等の事業を推進している同社は、お客様のニーズに合わせた細かい対応力を強みとしています。
《バイオマス材料でCO2排出量の削減に貢献!「XecoT」》
「サスティナブル材料」の「XecoT」は、成分のうち約50%以上が植物性由来の原料からできているバイオマスのスーパーエンジニアリングプラスチックです。
ユニチカ独自の重合技術、コンパウンド技術をもとに開発した圧倒的高性能を備えた植物由来芳香族ナイロン樹脂となり、上記構造を高純度で作り上げることにより、高い結晶性を実現。
他社にない高い結晶性に由来する高耐熱性・低吸水性・摺動性により、今までにない可能性を開拓する環境にやさしい理想の材料です。
詳細:https://www.unitika.co.jp/plastics/products/xecot/
https://www.youtube.com/watch?v=gD_xCrjlzN0
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、本展には非常に多くの来場者が訪れ、活気にあふれました。
100年に一度の大変革期と叫ばれる自動車産業界。中でも脱炭素社会の実現に向け、2050年までにCO2(二酸化炭素)の排出実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」の実現にあたり、自動車産業界においても大きな変革が求められています。本展においても、脱炭素技術の出展や、循環型社会の実現を掲げた展示や講演が多数行われました。
地球規模の難題を前に、脱炭素化・サステナビリティを実現する取り組みは、自動車業界のみで完結するものではありません。環境や産業へ大きな影響を与える自動車業界においては、“くるま” におけるライフサイクルを見直し、「原料・生産・消費・リサイクル」を軸とした「循環型」社会システムへの転換が求められています。
こうした新たな社会システムの転換においては、これまで以上に業種の垣根を超えた叡智の集結が求められるでしょう。本展主催の公益社団法人自動車技術会 展示会企画会議 幹事の山本氏は、本展の展望について「柔軟な解決策が求められる今、自動車産業を代表する出展がなされているが、今後は自動車産業の枠にとらわれず、幅広い業界からの出展がなされることでさらなる盛り上がりに期待したい」と述べ、多様な業界を巻き込んだ形での自動車業界の躍進に期待を寄せました。