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編集企画 その他 2025.10.08

基板実装工場における加湿の最適化

株式会社いけうち 空調事業部 部長 江崎 寛通

プリント基板関連ピックアップ記事 基板実装工場における加湿の最適化

はじめに

基板実装工場において工場内環境を安定させることは、生産性や品質を保つためにとても重要である。昨今では脱炭素(カーボンニュートラル)への取り組みも活発になっていることにより水加湿への関心が高まっている。
我々が提供するドライフォグ加湿システムは国内外を問わず、数多くの工場で採用され、生産性向上・品質向上に役立っている。
今回は実装工場における弊社ドライフォグ加湿システムの優位性を紹介する。

 

 

1. 加湿の目的

実装工場では、基板に極小なチップを高速で実装するマウンターが密集して配置されている。湿度が低くなり静電気が発生すると、リールの剥離帯電、チップの静電破壊、チップの吸着不良、作業者の帯電など様々な問題を引き起こす。

 

 

生産性や品質が求められる工場において静電気は天敵とも言える存在であり、湿度管理だけでなく、イオナイザーなどによる除電、静電床やリストストラップなどを複数駆使して静電気の予防と対策を行っている。どれか一つを実施するのではなく、適材適所で全ての予防と対策を実施することで、静電気による問題を最小限まで抑制できる。ここでは湿度管理による静電気予防に重点を置き、冬場の加湿について説明する。

 

 

2. 加湿システムの種類と特徴

加湿には様々な方式があり、それぞれ特徴が異なる。主な加湿方式の特徴を以下の表にまとめる

 

 

各方式で特徴が異なるため、対象エリアの状況によって使い分けをしないと、エネルギーを多く消費してしまうだけでなく、温度管理と相反する動きとなり、かえって増エネにもなりかねない。(温調で冷房除湿、加湿で温度上昇となってしまうと空調負荷が増大する可能性がある。)さらに、目標とする湿度に達しないという状況にもなりかねないので注意が必要である。水加湿を検討するうえでは、まず工場空調全体を把握して最適な場所を検討し、それから粒子径や気流、熱源の位置などを考慮して加湿システムを構築していくことが重要である。

 

 

3. 実装工場の温湿度環境

実装工場ではリフロー炉からの排熱により高温になることが多く、この排熱の排気量と同等以上の外気を取り入れているため、冬場の湿度低下が顕著になる。また、循環空気を多くして温調しなければ温度の安定も保つことが困難なため、外気量の数倍の循環風量であることが多い。高温の循環空気の比率が多いため、空調機では冬場でも冷房運転をしている工場が多く、冷房運転の空調機内での加湿がうまく空気に乗らずに湿度が目標値にまで達しないという問題が発生してしまう。

 

室内直接加湿や空調機内、クリーンルームであれば床下やレタンシャフトなどの循環空気系統で加湿をする場合は、冷房加湿ができる水加湿が望ましい。先でも述べたとおり、水加湿は気化潜熱により周囲の温度を下げながら加湿をすることができる。それゆえ湿度管理だけでなく空調の冷房運転のサポートも可能であることが、実装工場では数多く採用される所以となっている。

 

 

4. ドライフォグ加湿の特徴

実装工場で水加湿が重宝される一方、循環空気系統で霧を噴霧するため(工場内直接噴霧が多い)、霧の大きさである粒子径には細心の注意が必要であるとともに、噴霧ノズルの性能にも注意したい。まず粒子径は細やかであればあるほど、素早く空気に溶け込み、物体を濡らすリスクが低減される。弊社の『AKIJet(アキジェット)ノズル』は平均粒子径:7.5μm且つ最大粒子径:50μm以下で、粒子径のばらつきが少ないことが特徴。噴霧ノズルを選ぶ際、平均粒子径だけで判断するのは危険である。物体を濡らす要因となるのは最大粒子径の霧であり、『AKIJet ノズル』が採用されている理由はここにある。

 

また、同じ粒子径でも水圧に頼らず少ないエア量で加湿ができることも特徴である。水圧によって粒子径を小さくすることは容易ではあるが、湿度コントロールのON-OFF時に液垂れのリスクが大きくなるという問題がある。エア量をできるだけ少なくするというのは省エネの観点から重要な要素で、『AKIJet ノズル』はこの10年で約30%のエア量削減を実現している。弊社は、各地域に最適な水処理から工場内レイアウト(実装機や空調設備)に最適な加湿 器配置、工場内での最適な制御系統の分割など、現地調査・設計・施工・試運転・温湿度測定までを一貫して提供することが可能。約40年間で『AKIJetノズル』の2,000カ所以上への納入実績は、各社の実装工場の加湿に大きく役立っている。

 

 

 

5. 省エネ、環境問題

近年、脱炭素(カーボンニュートラル)への対策を各企業が積極的に取り組んでいる。各企業にとって、省エネルギーを検討し、工場運営エネルギーを減少させることが重要なテーマとなっている。工場運営のコストでは、空調関連が約30%を占めると言われており、その中で加湿が占めるのは25%とも言われており、大きなテーマとして捉えられている。上記加湿システムの種類と特徴でも説明したとおり、近年では水加湿への注目度が高まってきている。加湿するための霧発生エネルギーが小さく、実装工場では気化潜熱による冷房効果も期待でき、CO2削減にも貢献できることが注目度の高まりとなっている。有効加湿量:200L/hrの場合の比較を以下の表にまとめる。なお、有効加湿量:200L/hrというのは、30m×50m×4mHの工場を加湿するイメージである。

 

 

さらに気化潜熱による冷房効果は、電力値で約63,000kwh/年にもなる。電気代の高騰も重なっていることから、大きなコスト削減につながる。

 

 

6. アフターフォロー

加湿システムのみならず、設備を末永く使っていくためには適切なメンテナンスが必要である。弊社ではメンテナンス契約という形で水処理装置のフィルター交換やポンプのメンテナンスを計画的に行う提案をしている。メンテナンス専門部署を設け、定期的な点検メンテナンスを行える体制を取ることで、お客様に末永く安心してご使用いただける体制を整えている。弊社ではこのメンテナンス契約を“まかせっ霧”と名付け、システム導入時からお客様に安心してご利用いただけるようにご案内している。

 

 

 

7. まとめ

実装工場において工場内の湿度管理は重要である。ドライフォグ加湿は、静電気予防だけでなく、浮遊ゴミ低減や冷房コスト削減にもつながる。ドライフォグの特徴である(最大)粒子径や霧発生エネルギーに優れた加湿器が、数多く採用されているのは、それらが理由となっている。また、脱炭素化への取り組みとして、省エネと合わせて蒸気加湿からの切り替えを検討する企業が増えている。弊社は、加湿システムを構築するための現地調査から提案までを、数多くの経験値をもとに行えることが強みであるとともに、納入後に重要なアフターケアも専門部署にて的確に行える体制を整えており、末永く使用できる加湿システムを提供している。

 

 

8. 参考資料

[SMT(表面実装工程)ESD対策①]加湿システム7つの効果

https://www.dry-fog.com/jp/projects-technology/technical-report/hum-smt-001/

 

[SMT(表面実装工程)ESD対策②]加湿システム7つの効果

https://www.dry-fog.com/jp/projects-technology/technical-report/hum-smt-002/

 

[SMT(表面実装工程)ESD対策③]加湿システム7つの効果

https://www.dry-fog.com/jp/projects-technology/technical-report/hum-smt-003/

 

【実装工程におけるSMT・クリームはんだ印刷の品質向上】ドライフォグ加湿システム導入事例インタビュー|株式会社ルックス電子様【湿度45%以上を維持し静電気を抑制!】

https://youtu.be/CaM9GEtQi_g?si=6vWBOi8jXXf0OhoY

 

【工場の静電気対策】基板実装工程の加湿事例|エアコンの省エネや浮遊ごみ対策にも【ゴミブツ対策】

https://youtu.be/OJp3d8za5_8?si=yCEXS3kzw7WOVeXP

 

【工場の静電気対策】半導体工場の加湿事例|クリーンルームの加湿について【ゴミブツ対策】

https://youtu.be/Du0dpzJH4kk?si=gf2ZyPxUA2e-ZWAO

 

【SDGs|脱炭素】蒸気加湿→水加湿でCO2&コスト削減!【工場の静電気対策】

https://youtu.be/iNPFpVtDKn4?si=eSQpxNwCJZzTttTI

 

【工場の静電気対策】加湿?それともイオナイザ?|湿度管理と除電器の関係【ゴミブツ対策】

https://youtu.be/s1IGrPOo0II?si=l9ZK3t4JmD4POMRb

 

【工場の静電気対策】1流体加湿と2流体加湿の違い|ハイブリッド加湿とは!?【ゴミブツ対策】

https://youtu.be/5qhnTcF8isk?si=MNrH6z-47HM7-SJF

株式会社いけうち 空調事業部 部長 江崎 寛通
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