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編集企画 2018.07.26

連載:薄物プリント配線板の進化 Part3~なぜ板厚は1.6mmなの?~

青木 正光

連載:薄物プリント配線板の進化 Part3~なぜ板厚は1.6mmなの?~

銅張積層板の板厚は1.6mmを標準として、長い間通用してきました。なぜ1.5㎜でなく、半端な数字の1.6㎜かとお思いになるかも知れません。不思議ですね。
電子機器を設計する上で、銅張積層板の板厚は1.6㎜とされていますが、板厚にはある程度のバラツキがあり、表1に示すようにJIS規格で等級によって公差が設定されています。
1.6mmの板厚を例に示しますと標準品で1.4~1.8mm、高品質品で1.47~1.73mm、超高品質品では1.50~1.70mmまでの範囲であれば、許容されます。

表1.jpg


表1 プリント配線板用銅張積層板の板厚別の板厚許容差

例えば、任天堂から1983年に販売された『ファミリーコンピュータ(ファミコン)』のROMカートリッジをコネクタに差し込むようなプリント配線板の場合には、公差の少ない高品質品から超高品質品を選ぶのが無難でしょう。当時、ファミコンのソフトを動かすROMカートリッジに使用されたコンポジット銅張積層板は、コネクタに差し込むために超高品質の板厚公差が要求されました。要は、どんな機器に使用されるかを見極めて当事者間で公差を取り決めれば良い訳です。
さて、標準板厚が1.6mmとなった由来について紹介しましょう。
積層板の規格のルーツは、米国の電気機器メーカーの協会であるNEMA(National Electrical Manufacturers Association)が1927年にNEMA Handbook of Supply Standardsを作成したことからできあがっており、時代とともにグレードが追加されて、現在はNEMA LI 1規格となっています。制定後の2011年にNEMA LI 1の規格を再度確認し、NEMA LI 1-1998(R2011)が最新版の規格となっています。

写真1.jpg


写真1 NEMA LI 1

このNEMA LI 1のSection 4に『Dimensions and Tolerances of Sheets, Tubes and Rods』の章があります。ここに板厚について1/16インチの記載がされています。これをメートル法に直すと1.59mmとなり、小数第2位を四捨五入すれば1.6mmとなります。これが、板厚が1.5mmではなく、1.6mmになった由来です。ぜひ銅張積層板のバイブルとも言われるNEMA規格を一読することをお勧めします。
1/16インチのように、分数で表現する方法は、日本人には馴染みが少なく、ピンとこないでしょうが、米国では、様々なところで使用されています。例えば、道路標識の距離を示すのに写真2のように1/4マイルといった分数で表示されています。これは12進法を採用している関係で、1フィートは12インチとなり、12が割り切れる数字であれば理解できるため分数表示が利用されています。また、25セント硬貨をクォーター(1/4)ともいいます1)。このように米国では日常的に分数が使われていることから、標準板厚の1.6mmは1/16インチに由来し、それをメートル法で表示したため1.6mmという半端な数字となったことを理解いただけたのではないでしょうか?

道路標識.jpg


写真2 Readingまで1/4マイルと表示された道路標識

<NEMA LI 1規格の入手先>
https://www.nema.org/Standards/Pages/Industrial-Laminated-Thermosetting-Products.aspx
https://www.techstreet.com/standards/nema-li-1-1998-r2011?product_id=2136

<参考文献>
1.梶田栄(2018),「先人の知恵を次世代に <日本の常識、世界の非常識(3)>」,プリント回路ジャーナル2018年06月5日号,p10, プリント回路ジャーナル

NPO法人 日本環境技術推進機構 横浜支部 理事青木 正光
http://www.jetpa.jp/jetpa/
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