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広告 2024.12.09

【限定資料公開!】高機能樹脂『SPS』の概要と自動車分野における活用事例—SMTコネクタとEV向けeアクスルインバータへの応用

基板の窓口編集部

プリント基板関連ピックアップ記事 【限定資料公開!】高機能樹脂『SPS』の概要と自動車分野における活用事例—SMTコネクタとEV向けeアクスルインバータへの応用

下のリンクから、出光興産公式サイトでは閲覧することのできない限定公開資料が入手可能です。
(会員登録なしでも入手可能です。)

今回の記事ではダウンロードできる資料に、XAREC™ S145 リフロープロセス対応資料および、耐ヒートショック性に優れた新グレードXAREC™S146の資料が追加されました。

資料ダウンロードフォームはこちら

▼本資料で得られる情報の一部
SPSの特長と想定事例について(2024年11月版)
SPSが誇る誘電特性(電気特性)と耐熱性について
・高周波用途への提案(5Gアンテナカバー、高周波対応コネクタ等)
XAREC™ S145の車載用コネクタ向け評価データ
・【新資料】XAREC™ S145のリフロー耐熱性評価データ
・【新資料】XAREC™ S146の耐ヒートショック性および物性評価データ

 

出光興産_SPS_限定資料_イメージ

リンク先資料より抜粋

 

本記事では、エレクトロニクス業界で働く研究開発・生産技術職の方々を対象に、出光興産により開発された、日本発のエンジニアリングプラスチック「シンジオタクチックポリスチレン(SPS)」について取り上げます。

同素材の最大の特徴は、優れた誘電特性と耐熱性であり、高速通信分野や、SMT関連分野などでの活躍が期待されています。本記事では前回記事に引き続きSPSの新たな用途開拓事例として、SMTコネクタおよび、EV向けeアクスル内での活用事例について資料内のデータを交えて解説します。

前回記事はこちらから
エレクトロニクス業界に貢献する樹脂「SPS」の特長を徹底解説

 

目次

SPS概要
    - はじめに
    - SPSの特性
自動車分野におけるSPSの用途開拓事例
    - SMTコネクタ
    - EV向けeアクスル中のインバータへのSPSの提案
おわりに

 

SPS概要

はじめに

シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は、出光興産㈱が1985年にメタロセン触媒を用いて世界で初めて合成に成功した結晶性ポリスチレンである。

その後、工業化に向けた触媒改良、プロセス開発、コンパウンド材料開発を経てエンジニアリングプラスチックとして1996年に商品名「XAREC™」で製造販売を開始した。

現在は世界唯一のニートレジンサプライヤーとしてグローバルに事業展開を進めており、千葉に生産能力9,000㌧のニートレジン製造プラント、2023年からは、同じ生産能力を持つプラントをマレーシアのパジルグダン石油コンプレックス地帯において稼働させ、これら2つの生産プラントから顧客へ供給を始めている。

また、コンパウンドは、日本国内のほか、中国、北米、欧州の主要4地域で生産し、顧客へ供給している。

新素材であるSPSの用途開拓は、自動車分野、家電・日用品分野、押出・フィルム分野、アロイ分野と多岐に亘り展開しており、他の材料との差別化を図っている。

 

SPSの特性

SPSは化学構造的には通常の汎用ポリスチレン(非晶性、アタクチックポリスチレン)と同じであるが、シンジオタクチック構造と呼ばれる高い立体規則性を有しており、結晶化速度が非常に遅く、工業生産化が難しいとされたアイソタクチックポリスチレンに対して、実用レベルの結晶化速度を有する結晶性樹脂である。

SPSの特性はポリアミド系樹脂(PA66 ナイロン66)、PA6T(芳香族ナイロン)やポリエステル系樹脂(PBT ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)などの縮合系エンジニアリングプラスチックとは大きく異なる。これは、SPSが極性基を持たないポリスチレン骨格としていることと結晶性を有する2点に由来する。

ポリスチレン骨格の観点からは、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性などの良好な特性を受け継いでいる。また、結晶性が付与されることにより、優れた耐熱性(融点270℃)と耐薬品性の大幅な向上が発現している。

これらの特性を活かした用途開拓が進んでおり、自動車分野、家電・日用品分野、電気・電子分野、押出・フィルム分野、高速通信分野などで実際に顧客から採用されている。以下に自動車分野への可能性について記載する。

 

自動車分野におけるSPSの用途開拓事例

SMTコネクタ

現在、SPSでは、基板コネクタ、ワイヤーハーネスコネクタ向けに相当グレードが採用されている。特にSMTコネクタでは、ハンダ耐熱性が要求されるが、昨今の実装形態がSMT実装(Surface Mount Technology)へ移行されてきており、従来の局所フロー型実装よりもハンダ耐熱性の要求が更に高い温度領域で求められてきている

従来グレードの荷重たわみ温度(HDT 1.8MPa)は240℃であったが、コンパウンド技術により、260℃へ上げることで、耐熱性を向上させ、かつ耐ブリスター性、寸法安定性に優れたS145を上市し、更なる展開を図ることにした。(図1,2

 

出光興産_SPS_耐熱性グラフ

(図1)

 

出光興産_SPS_リフロー耐熱性グラフ

(図2)

SMT実装後の寸法安定性については、従来材とS145にて、リフロー前後の成形収縮率の変化、コプラナリティ、線膨張係数で比較してみた。

 

◆成形収縮率(図3,4
成形収縮率は、流動方向とその直角方向でS145の方が小さいことがわかる。リフロー実装前後の成形収縮率は、リフローピーク温度を240~260℃で変化させた際に、流動方向とその直角方向で収縮率を想定したところ、流動方向、その直角方向とも、温度パターンに依存せずS145の方が小さく、かつ収縮の異方性が少ないことが分かる。

出光興産_SPS_成形収縮率評価方法

(図3)

 

出光興産_SPS_リフロー異方性グラフ

(図4)

 

◆コプラナリティ変化量(図5,6
出光興産の保有するコネクタ型でコネクタを成形後、リフロー温度シミュレータでコネクタ表面を加熱し、コネクタ接地面/底面間距離を測定し、その変化量を従来材とS145で比較した。S145は従来材に比べてコプラナリティ変化量が小さいことがわかる。

 

出光興産_SPS_リフローシミュレーター結果

(図5)

 

出光興産_SPS_コプラナリティ変化量

(図6)

 

◆線膨張係数(図7
ISOダンベル試験片の中央部にて、流動部位とその直角方向でサンプルを切り出し、−40~150℃温度領域での線膨張係数を測定したところ、S145の線膨張係数は測定した温度領域で小さいことがわかる。

出光興産_SPS_線膨張係数比較表

(図7)

 

◆耐ブリスター性(図8
図8で示すように、S145はブリスターが出にくい材料に仕上がっている。

出光興産_SPS_耐ブリスター性比較

(図8)

 

◆物性一覧表(図9
従来材とS145の機械強度物性一覧表を示す。

出光興産_SPS_物性一覧表

(図9)

 

以上のように、従来材と比較してハンダ耐熱性を上げ、実装前後での寸法安定性、コプラナリティ変化量の抑制、低線膨張係数化の実現、ブリスター外観の抑制を果たしたS145を上市したので、今後の自動車向け基板コネクタへ展開を推進する。

 

EV向けeアクスル中のインバータへのSPSの提案

EV車における根幹部品であるeアクスルは、EV車の販売増加とともに年々増加傾向にあり、2035年には5,670万台まで進むという情報がある(出典:富士経済 図10

出光興産_SPS_E-アクスルについて

(図10)

 

最近のトレンドとして、モーター/インバータ/減速機の3 in 1 機電一体型がスタンダード化しており、今後は更に周辺電子制御系部品を統合したX in 1方式が進むと思われる。(図11

図11 EVの最近のトレンド

(図11)

 

欧州部品メーカーの機電一体型eアクスルの例を図12に示した。今後はサプライヤー側では、X in 1方式で各社差別化を図ると思われる。

図12 欧州部品メーカーの機電一体型E-アクスルの例

(図12)

 

SPSは、先述の通り、耐熱性、電気特性、誘電特性、軽量化、寸法安定性、成形流動性に特徴があるため、
eアクスルの中でもインバータの部品として既に実績化を図っており、今後も進展していくと思われる。
インバータとは、電池から供給される直流を交流に変えてモーターへ最適な電流をコントロールしながら供給するスイッチング電源である。(図13

図13 インバータについて

(図13)

 

このインバータには、バスバーと言われる電極(金属)をモールド樹脂で覆うような部品が点在しており、フレームを形成している。(図14

図14 インバータ構造模式図

(図14)

 

このバスバーに求められる要求特性は、ヒートサイクル、ヒートショック、低線膨張係数(寸法精度)、薄肉成形、トラッキング性 があり、SPSには最適な条件であり、特に従来品では課題であったヒートショック、ヒートサイクルのタフネス性を改良し、S146を上市した。(図15

図15 インバータ(バスバー)モールドに求められる物性

(図15)

 

特にヒートショック、ヒートサイクル性に関しては、出光興産独自の評価テストピースを作製して、評価を進めた。(図16

図16 XAEREC S1466X、S840X(開発材)イメージ

(図16)

 

この評価では従来材は数十サイクルでクラックが入るところを、S146では1,000サイクルでもクラックの発生しないことが確認できている。現在、難燃性を付与したS840Xも開発中であり、近々上市の予定である。図17に、従来材と比較した物性一覧表を示す。

図17 XAEREC S1466X、S840X(開発材)各種物性

(図17)

 

今後はこれらのグレードをグローバルに展開して、当用途へ進展させていく予定である。

 

おわりに

自動車部品のうち、車載コネクタ部品としてSPSは実績、認知度を上げてきており、今後もSMT実装に対応したS145にて当該用途を拡大していく。

一方、EV車の進展とともにeアクスル部品も益々増加傾向にあり、当該部品中のインバータ並びにバスバーも呼応していく。SPSの特徴を活かして、新規に上市したS146S840Xで当バスバーへの提案を推進していく。

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